地盤培養行為という弁明で、買収の違法性を否定ないし希釈化できるか

早川 忠孝

選挙の3ヶ月前にした金員提供なら地盤培養行為として許され、処罰されないという法理はない。

選挙区内の有力者に現金を持参して挨拶に回る国会議員が今でも現実にいた、ということを知って驚いている。

典型的な選挙買収である。

法務省サイト、官邸サイトより

普通の人なら、怒って突き返すところだろうが、即座に突き返した人も、しばらく経ってからこれは拙いと思って、そっと返した人も、さらには黙ってポケットに入れた人もいたようだ。

かつて私の同僚の一人だった衆議院議員は、地元の市会議員のところをすべて一人で回って、様々な諸経費に充当して貰うために、10万円入った白封筒を渡して買収の罪に問われ、議員辞職を余儀なくされた。
10万円の白封筒を受け取った市会議員は全員逮捕されて、結局、皆、辞職することになった。

既に先例があり、有罪判決が確定しているのだから、地盤培養行為だという弁明は到底通用しない。

広島地検は、当然この先例を踏まえて、件の国会議員の選挙違反の捜査を続けているはずである。
逃げ道は、どこにもない。

なお、この件に関し安倍総理や自民党本部が窮地に追い込まれるのではないか、と指摘される識者がおられたが、自民党本部が選挙区支部に相当の金額を振り込んでいた事実があっても、自民党本部がその具体的使途まで把握していたはずはないから、捜査の対象が自民党本部やその他の関係者にまで及ぶとは、私にはとても思えないことを付言しておく。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2020年4月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。