さて、補償なしの休業の強制は違憲か

早川 忠孝

休業指示を無視して営業を再開したパチンコ店があるそうだ。

※画像はイメージです(Erik Jaeger/flickr:編集部)

単なる休業要請から休業指示に移行しているのだがら、この場合の営業の強行は明らかな特措法違反の違法行為ということになる。

補償なくして休業なし、などと嘯いている方もおられるが、いくら営業の自由の保障が憲法上の要請であったとしても、営業の強行を唆すような物言いはほどほどにされた方がいいだろう。

何らかの補償措置を講じた方がいい、というのは、一つの政治的判断ではあるが、だからといって何らの補償措置が用意されていないから当該休業要請や休業指示が違憲だ、などとは言えない。

休業指示を無視して営業を強行するパチンコ店に対して何らの措置も講じることが出来ないということになってしまうと、休業の要請も休業の指示もただの張り子の虎になってしまい、悪くすると休業要請や休業指示を無視する輩と陸続と現れてしまうかも知れない。

日本を法を平然と無視する輩が跳梁跋扈するような社会にしてはいけないと思う。

休業指示に法的な強制力がない、ということを奇貨として知事が発出した休業指示を無視するのであれば、当該休業指示にそれなりの強制力を付与する方向での検討を早急に進める必要がある。

なお、罰則付きで休業を強要するのは、営業の自由を侵害するもので、違憲の疑いが濃厚だ、などと論じている方がおられたので、若干私見を申し述べておく。

私の考えでは、感染症対策の一環として、新型コロナウィルスの感染被害拡大を防止するために感染拡大の懸念が客観的に濃厚と認められるパチンコ店に対して休業を要請したり休業を指示することは、公共の福祉の観点からは当然正当化されるものである。

基本的人権の内容は、公共の福祉に適合するように解釈すべきである、という法理に従えば、営業の自由も無制限ではあり得ず、公共の福祉に抵触しない範囲で認められるべきものであるということになる。

政策的に当該事業者に対して何らかの補償をすべき、と提唱されるのはいいが、違憲だなどと仰るのは、やはり、少々踏み込み過ぎではなかろうか。

ご参考までに。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2020年5月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。