業務効率化するためのテレワークをマナーで非効率化する残念な老害たち

黒坂 岳央

こんにちは!黒坂岳央(くろさかたけを)です。
※Twitterアカウントはこちら→@takeokurosaka

またまた、頭のイカれた「テレワークマナー」なるものが出てきた。

※画像はイメージです(こうまる/写真AC)

誤解のないように言っておくけど、筆者はテレワークマナーのすべてを全否定をするつもりはない。マナーとして主張するものの中には「相手が音声を聞き取りづらくないよう、できるだけ配慮しよう」といったものは「せやな」と感じるものもある。

  • 部下は上司がログアウトするのを待ってから。
  • クライアントとの打ち合わせ前に服装を打ち合わせ。

だが、正直こうしたものはクレイジーとしか感じられない。

今はまだ笑い話だが、コロナ禍に端を発するテレワークが中期化することで、このジョークが本気でマナーとしてまかり通ることになりかねない。その前に筆者がクレイジーな取り組みへ警鐘を鳴らしておくことにする。

効率化のためのテレワークを非効率にするイミフな人たち

そもそも、テレワークというのはコロナ禍でソーシャルディスタンスを実現させるためのものではなく、「会議のためのムダな移動」「通勤時間」を削減し、本来必要な業務にリソースを集中的に投下するために考案されたものだ。

つまり、テレワークというのは「業務効率化」が実現されることで、はじめて意義のある取り組みなのである。非効率なテレワークをするくらいなら、素直に出社して会議室で打ち合わせをする方が100倍マシというわけだ。

だが、このせっかくの業務効率ツールであるテレワークの良さをすべてブチ壊し、壊れて穴の空いた部分に「非効率」という名のクソをギッシリ詰め込んだものが登場した。それが今回取り上げる「テレワークマナー」なのだ。

マナーの定義とは「相手を不快にさせない礼儀作法」だ。食事中にゲップをしてはいけないのは、それを不快に思う人がいるからだ。食事中にゲップを控えることをマナー化するのは、当事者全員の幸福度の総和を最大化させるための合理性がある。

だが、本来は可視化されなかったものを、わざわざ「マナー」として定義する必要はない。テレワークマナーをバシバシ作ってしまうと、その結果、お互いがマナーという名の鈍器で「お前、それマナー違反じゃねえか」と殴り合うことになるだろう。テレワークマナーという名の合法的鈍器で、部下を嬉々としてドツキ始める老害上司が出現するのは間もなくのことであろう。

※画像はイメージです( こうまる/写真AC)

効率化のためのテレワークで、ただでさえ低い日本人の労働生産性をさらに下がる。ヤベエな、なんかめまいがしてきた。コロナ禍の景気後退で、日本人にこんな茶番をしている余裕はないはずなのに。

マナー化することでドンドン非効率になる

世の中にはいろいろなマナーがあって、中にはグレーゾーンも存在する。改正健康増進法で状況は変わったが、たとえば「喫煙者も飲み会の時は吸ってもOK」といったものがあった。普段から紫煙を振りまくのは頂けないが、誰もが胸襟を開けて話すことが奨励される飲み会の時くらいはOKとされていた。筆者はタバコが大嫌いだが、このグレーゾーンについては理解を示したいとおもってる。繰り返すけどタバコ嫌いだけどな。

だが、世の中のグレーゾーンをマナー化すると、それまで起こらなかった問題が起こるようになる。「マナーだから守れ」とマナー厨のパワーバランスが極端に強くなり、みんながマナーを守ることを余儀なくされる。結果、マナー厨が水を得た魚になってドンドン業務が非効率になっていく。

一部のマナー厨の雇用を守るために、他の大多数の人たちが不便さを強制されるのはおかしいと思うの。

今後出てきそうな悪しきテレワークマナー

筆者が懸念する「今後出てきそうなテレワークの悪しきマナー」は次のようなものだ。

  • Webカメラの解像度は1080p以上
  • 快適なコミュニケーションのために光通信を使う
  • ZOOM飲みでは、部下は上司より高いお酒の銘柄は飲まない
  • カメラに机と椅子以外はの映像が写り込んではいけない

この他にもきっと、こちらの予想斜め上のクレイジーマナーが飛び出してくることだろう。本質的な思考ができる人にとっては、このような枝葉末節な話は笑い話かジョークとして受け取る。だが、一部のピュアで規則を愚直に守ることしか取り柄がなく、でも権力を持っている厄介な人会社内でいえば「老害上司的ポジション」の人が真に受けてしまうと、喜劇が悲劇化してしまう。これは笑えない。

悪しきマナーには適切なラベリングをせよ

このような世の中を増々生きづらくする傾向を止めるには、現象や物事のラベリングが重要であると思っている。

例を上げたい。筆者は「万引(まんびき)」という呼称は良くないと思っている。万引は店舗側にとっては潰れるかどうかの瀬戸際となる、重大な損害を与える憎むべき犯罪だ。「窃盗」といえば犯罪の重大さが伝わるのに、「万引」というとカジュアルで、若者や老人のデキゴコロくらいのノリに聞こえるのではないだろうか。だから筆者は「万引」ではなく「窃盗」にラベリングを変更すべきと考えている。

ラベリングの効果はバカにできない。たとえば近年になって暴走族が減ったのは、本質的に青少年の暴力性が下がったというよりは、暴走行為に対する世間的なラベリングの変化が大きいと考える。「珍走団(ちんそうだん)」などとカッコよくないラベリングで「暴走ってダサいよ」という風潮で抑止できているんじゃねえかな。

この「テレワークマナー」も、マナーなんて呼ばないようにしてほしい。もちろん、本当に必要なマナーである「声が聞き取りやすいようにしゃべりましょう」というものなどはマナーとラベリングして差しつかえない。だが、「上司がログアウトするまで待機せよ」といった昭和感・老外感漂う呼びかけを「マナー」と同列に扱ってはいけない。

  • 聞き取りやすくしゃべりましょう。
  • 上司がログアウトするまで待ちましょう。

前者は「マナー」だが、後者は「老害マナー」とでも呼べばいい。老害認定されたくない人は、嘲笑の対象になることはしないだろう。

労働生産性を高めるためのテレワークで、消耗する人を出さないためにも適切なラベリングが望まれる。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。