緊急事態宣言が5月14日に39県で解除された。今までに全国合計で感染者は15,854名、死亡者668名に達した(5月13日0時現在)。外出自粛が続き経済的損失も甚大である。
この間の日本の対応は評価できるものだったのだろうか。
NY Timesが各国比較を行っている。同紙は平年と今年の死亡者数をグラフにした。青線が平年値で、今年は赤線。スペインでは3月に急激に跳ね上がり、最近は平年値に戻ったと読み取れる。
平年値を上回る過剰分(赤線と青線の差)は新型感染症で死亡した疑いがある人数ということになる。スペインの場合この過剰分は31,500人となり、政府が公表している感染症死亡者数25,213名よりも約6,300名多い(5月13日現在)。
この図から二つのことが読み取れる。第一は感染爆発が起きたかどうか。赤線が青線から離れるほど急激な爆発が起きたといえる。第二は、政府が状況を把握しているかどうか。6,300名ものずれでは把握不十分というしかない。
ところで、スペインは平時に毎週の死亡者数を公表してきたのでこのような評価ができた。これに対してイタリアは平時には月単位での公表なので、最近の状況はまだグラフに書かれていない。日本はもっと情けない。平時には年単位での死亡者数しか公表していないので、グラフが書けないのだ。
しかし、推測はできる。
厚生労働省によると2019年の死亡者数は137万6千名である。蔓延期間を60日と仮定すると、新型感染症で死亡したと特定されている人数668名は平年値の0.3%に相当する。
東京都も同様に計算できる。2018年の死亡者数は119,253人。これに対して感染症による死亡者数は203名。同様に蔓延期間を60日と仮定すると、新型感染症で死亡した人数は平年値の1.0%に過ぎない。二つの計算は、日本では感染爆発はなかったと示唆する。
どうやら日本はよくやったらしい。しかし、詳しい死亡者数統計がないので確認できない。
政府が持つ統計データをできる限り公表する「オープンデータ」の重要性は叫ばれて久しい。日本もその方向に向かっているはずだが実態が伴っていない。
感染爆発した欧米に学べという不思議な意見がメディアに溢れる一因は、NY Times流の各国比較もできない、オープンデータ戦略の遅れにある。