重要だから、プロでないから発言する

政治や政策について、芸能人がコメントを発信することに関して議論が起こっています。国家公務員法・検察庁法改正案が、通常国会では議決されなくなったので、内容の話ではなく、「意見を言う」ということについて、冷静に考えてみたいと思います。僕の考えは、「重要だからこそ、政治や政策作りのプロでない人が、積極的に自らの考え方や意見を言うべき」というものです。

SNS上では、プロでない芸能人が、政策に関する賛否の発言をすることについて、否定的な意見も多い。「勉強してから言え」、「素人が口をはさむな」、「プロに任せておけ」、僕はこうした意見に違和感を持っています。

批判をしている人達が、どれだけ詳しいのか、どれだけ詳しければ意見を言って良いのか、政策作りのプロ以外は投票行為以外に政治や政策に関わってはいけないのか・・・、健全は民主主義国家は、様々な立場の人が自由に意見を言えることです。言えるけれど、言った人の心が傷つく事を平気で行える国は、健全な民主主義国家とは言えません。

意見に対する真っ当な反論を封じるつもりもありませんが、先ず、意見を受け止めることから始める必要があります。今の日本は、残念ながら、言えるけれど、言い出せない空気があるような気がします。

日本では、宗教と政治の話はタブー、公的施設でも利用が制限されているケースが多いのです。しかし、普通選挙が確立され、義務化ではないけれど、納税者として選挙に行くことが推奨されている、つまり投票率が100%であることを目指して社会が動いている以上、政治の話をタブー視することは、本来のあり様でないと思います。

選挙の時だけ関心を持つ程度では、投票率が高まることはありません。しかし、プロでない以上、年がら年中、政治や政策に関心を持ち続けることは現実的ではありません。自分にとって、大切に思える事、おかしいと思える事について、意見を表明してみることが大切なのです。常に政治や政策に意見表明していないのに、突然、意見するのは意図的なことが隠されているのではないか、というのは勘繰りに過ぎないと思います。

政治家、公務員、学者、シンクタンク等の政策作りのプロはもちろんのこと、スポーツ選手、アーティスト、芸能人、文芸人等の誰もが、特に社会に影響力がある人こそ、支持政党や、政策に対する賛否を表明して欲しいと思います。表明したから、アンチの人からネットで攻撃されたり、リアルな社会生活に支障がおきることは、あってはなりません。陰に陽に見えないところで、影響を与えるようなことは、絶対に慎まなくてはいけません。

「彼は俺の考えに異論をもっているから・・・」、「あいつは、選挙で俺を応援しなかったから・・・」、例えば衆議院選挙は10日間、その期間は敵であり、戦いであっても、それが終われば、ノーサイド。応援してくれた、くれないに関わらず、国民として、納税者として、政治を担う側は対応していくべきなのです。また、支持政党を持っている場合でも、支持政党が行っている政策が間違っていると思うことがあれば、意見を表明すべきです。お任せ民主主義は、良い国をつくりません。

意見が異なる人を排除することはあってはいけません。耳を傾け、異なる意見を受け入れることで、更に良いアイデアを作り上げることが出来るはずです。

阪神ファンと巨人ファンは、支持するチームが違えども、プロ野球ファンという大きな括りでは仲間なのです。同様に、政治や政策についての意見は違っても、日本という国に住み、日本を良い国にしたいという括りでは仲間のはずです。

仲間を大切にしない組織は、疲弊し、崩壊していきます。僕は次世代に民主主義が形だけの国になり、本質が疲弊した国をバトンタッチしたいとは思いません。

先ず、意見を表明してみよう。今は勇気がいる事かもしれないけれど!それが民主主義国家です。


編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2020年5月25日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。