6月2日の「JNN」世論調査では、岸田内閣の支持率が先月比で4.7ポイント下落し、25.1%になった。政党支持率は、自民党23.8%(前月比+3.7ポイント)、次が立憲民主党の7.3%(同▼2.9ポイント)だ。国政の補選でも首長選や区議選でも、自民党は負け続けなのにおかしな話ではある。
とはいえ、岸田総理が国民に見限られていることに違いはない。これ以下になると政権が倒れるとされる「青木率50%」を切った訳だが、筆者は2年前の9月以降、岸田政権が続けば「自民はおろか日本が危うい」ことを拙稿で何度も指摘しているから、この世論調査の結果に驚きはない(青木率:内閣支持率+政党支持率)。
9月に総裁選を控えるポスト岸田の調査では、5月19日に「読売」が、石破22%、小泉16%、河野10%、高市・上川7%と報じている。2月6日の「産経」は「ポスト首相候補と呼ばれて13年…」なる見出しで、01年頃から首相候補と目されている石破氏は、総裁選を5回経験し、3回出馬したと書いている。
そこで今回、2020年6月3日の拙稿の再掲をお願いした。
「石破4条件」という関所を越えた「岡山理科大学獣医学部」はこの2月に77人の合格者を輩出した(受験者は114人)。3月13日の「NHK」は「『加計学園』運営の大学 獣医師合格率が平均下回る」との、いかにも底意地の悪い見出しでこれを報じた。
石破氏もコロナ禍の21年4月16日のブログで、「国家戦略特区制度を活用して設置された加計学園が運営する岡山理科大獣医学部が政府の新型コロナウイルス対策に関する発信がほとんどみられないとして『残念なことだ』と苦言を呈し」ていた(4月16日の「産経」)。筆者には弁解がましく思える。
ある予備校は、今年は6年前に開校した岡山理科大学獣医学部が加わり、獣医学部受験者数(1394人)と合格者数(1013人)が共に過去最高となったとしている。斯くて、慢性的な獣医師不足と獣医学部の定員オーバーが緩和され、加戸元愛媛県知事の20年来の悲願が成就した訳である。この間、国家戦略特区ワーキングチームで「加計」を担当した荒英史氏も一連の訴訟で勝訴した。
■ 2020年6月3日の過去記事
1日に報じられた産経・FNN世論調査で、次の総理にふさわしい政治家トップは18.2%の支持を得た石破茂氏だった。自民党支持層では16.0%に過ぎなかったが、立憲民主党支持層で42.9%、支持政党なしで76.0%の高い支持を得た。自民党の議員なのに、と思うがそれはおく。
筆者は石破氏に恨みもないし、それなりに見識のある政治家と思う。が、3年前の加計問題に関連して、地方創生担当大臣だった15年夏頃、獣医師会に便宜を図った疑いが報じられた、いわゆる「石破4条件」の落とし前を付けない限り、彼の総理などあり得ないと考える。
17年7月18日の産経記事にはこうある。
「学部の新設条件は大変苦慮しましたが、練りに練って、誰がどのような形でも現実的には参入は困難という文言にしました…」 平成27(2015)年9月9日、地方創生担当相の石破茂は衆院議員会館の自室で静かにこう語った。向き合っていたのは元衆院議員で政治団体「日本獣医師政治連盟」委員長の北村直人と、公益社団法人「日本獣医師会」会長で自民党福岡県連会長の蔵内勇夫の2人。
石破氏の語った「文言」とは、国家特区として獣医学部新設の盛り込みを閣議決定した「『日本再興戦略』改訂2015」(平成27年6月30日)の中の以下の文言。これが、いわゆる「石破4条件」として報道された。
獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討・・「現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要があきらかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。(121頁)」
筆者はこれに関し、今は削除されている15年7月10日(閣議決定10日後)に行われた「全国獣医師会事務・事業推進会議」議事録の北村直人日本獣医師政治連盟委員長の活動報告をWordに落とし保存している。長文だが貴重な資料なのでそのまま引用する。(太字は筆者)
日本獣医師政治連盟として、今まで新しい獣医師養成大学・学部の設置については反対をしてまいりましたが、本件について最終的に先日閣議決定がなされました。骨太方針あるいは成長戦略という言葉をニュース等々で皆様も目にされたと思います。
その中に、本当に小さく獣医師養成大学・学部の新設に関する検討という項目が出てまいります。その部分を読ませていただきますと『現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要があきらかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う』という文言が出てまいります。
3つの条件が付いています。つまり、新しい大学を作りたいところが既存の獣医師養成機関でないという構想が具体化すること、次に、獣医師が新たに対応すべき分野の需要の養成があるということが2つ目、かつ、16獣医学系大学で対応できない場合ということが3つ目の条件となりますが、その獣医師養成の大学・学部の新設の可能性はこの3つの条件によりほとんどゼロです。16獣医師系大学で対応できない獣医師はいない訳ですから、現在の獣医師学系大学でこれらができるということは当然です。石破担当大臣と相談した結果、最終的に「既存の大学・学部で対応が困難な場合」という文言を入れていただきました。
ただし、今後もこの問題は尾を引いてくると思います。つまり、日本の最高権力者である内閣総理大臣が作れと言えばできてしまう仕組みになっておりますので、こういう文言を無視して作ることは可能です。内閣がもしこれを行うのであれば私たちは現在の内閣に対して敵に回らざるを得ないのですが、獣医師会としては抵抗勢力にはなりたくない。抵抗勢力としてマスメディア等々で取り上げられ、獣医師会は抵抗勢力である、訳の分からないことを言っている団体だということになりますと、世論の風当たりは強いものとなります。
日本獣医師政治連盟といたしましては、先ほど申し上げました3つの条件は、既存の16獣医学系大学が今回の答申に対するコメントをするべきであるということが我々の見解です。そして、16大学から日本獣医師会、日本獣医師政治連盟による具体的な検討・対応を行うことが本筋であると考えております。
最終的には、今回の獣医師養成大学・学部の新設については、どこを読んでもこれを覆すような状況は一つも見当たらない。つまり、新しい獣医学系大学・学部の設置はできないということが今回の骨太方針、成長戦略の文言に書いてあると考えております。これをクリアする新たな獣医師の資格を作るのであれば別だと思われますが、現状では設置できないということが日本獣医師政治連盟としての見解です。繰り返しになりますが、日本の最高責任者がもし失言するようなことがあればできないことはないということは我々も腹にすえておかなければならないということだけ、ご報告させていただきます。
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とかく批判された「特区」と加計学園だが、そもそも「特区」は小泉内閣の「構造特区」(02年)、菅内閣の「総合特区」(11年)と来て、安倍内閣の「国家特区」(13年)に至る。加計学園は補助金のない「構造特区」の時から16回目の15年の申請で、漸くワーキンググループ(WG)が動き出した。
先般、加計のWGを担当した原英史氏が、森ゆう子議員によって名誉を棄損された事件があった。この事件では、WGの役割が申請者と官庁の調整役ではなく、むしろ申請者の側に立って官庁の岩盤規制に穴をあける役割であることが明らかになった。蟻の一穴を全国展開する先兵の支援役ということだ。
先の産経は、獣医師政治連盟が12年12月、自民党幹事長に就任した石破氏の「鳥取県第一選挙区支部」に100万円献金したことや、石破が獣医学部新設について「(4条件が)証明されればやればよい。されなければやってはいけない。非常に単純なことだ」と事あるごとに語ってきたとする。
また、「石破4条件」といわれ始めると石破氏は、「私が勝手に作ったものじゃない。内閣として閣議決定した」と述べたことや、平成27(2015)年9月9日発言についても「そのような事実はなかった」と全面否定した、とも同記事は報じている。
ならば北村氏の活動報告は嘘か。彼は「会議で多少、成果を誇示する表現で報告することはある。あれは石破さんの実際の発言ではなく、私の説明を獣医師会の事務局がまとめた」と釈明した。とすると、前川喜平氏が朝日に持ち込んだとされる文科省メモと同工異曲ということになる。
前川メモは、WGで原氏にやり込められた文科省課長補佐が、「成果を誇張する表現で報告」したメモを、朝日が都合の悪い部分は読めないようにして報じた。それは当日のWG議事録と突き合わせれば証明可能だ。が、北村報告は裏取り不能。だのに、加計の針小棒大な報道や騒ぎは一体どういう訳だ。
加計問題は、16度に及ぶ特区申請の経緯、故加戸守行氏や原氏らWGの国会証言などで、なんら瑕疵のないことや獣医学部新設の必要性が明らかになった。他方、「石破4条件」に関する北村報告の真相は依然として藪の中だ。
これの落とし前を付けない限り、石破総理など到底考えられない。