警官による黒人死亡事件後、人種差別抗議デモが全米に波及していますが、米株市場は上昇基調をたどります。
なぜなのでしょうか?答えを探るために過去を紐解いてみましょう。
こちらをご覧下さい。
チャート:抗議デモ発生時と米株リターン
過去の主だった5回のデモを取り上げてみると、4勝1分で2011年にほぼ横ばいに終わった程度でした。金融危機後の景気回復時期が並んだ事情もあり、平均のリターンは8.6%高、2014年の”ブラック・ライブズ・マター”の抗議活動期間を2015~16年と捉えて平均を算出しても、7.1%高と上昇するケースが多かったんですよね。2015年以降は利上げ過程に入り、かつ量的緩和も終了する段階にあったにも関わらず、共に上昇して1年を終えていました。
足元の視点を戻すと、Fedが無制限緩和を実施しております。保有資産が右肩上がりで拡大するにつれ、米株の上昇ペースも加速してきました。なお、S&P500は3月23日の底値から70%以上戻してきましたが、保有資産も同様に米国債再開を決定してから保有資産を64.5%拡大させております。
チャート:Fedの保有資産とS&P500
緊急資金供給措置を稼働したことも、無視できません。特に社債を裏付けとした上場投資信託(ETF)の購入は、米株相場を直接下支えする効果があるだけに注目ですよね。
そこで、Fedのバランスシートをみてみましょう。開始直後の5月12日週で社債関連ETFを3億ドル取得し、社債関連ETF保有高は5月27日週までの過去3週間で29.8億ドルに達しました。日銀は1年間でのETF買入額上限を3月に6兆円から12兆円へ引き上げましたが、FedのETF取得ペースは6兆円規模当時に近いことになります。
経済活動が再開し、Fedの金融政策と緊急資金供給措置に下支えされるだけでなく、トランプ大統領は追加景気刺激策を検討中だといいます。給与税減税、中間層向け減税、インフラ投資、さらには対中圧力強化の一環として中国など海外拠点の米国回帰を行う企業へのインセンティブなどが検討されているとか。
楽観的な米国人ですから、目先の悪材料より近い将来の好材料に飛びついたとしてもおかしくありません。投資格言「山高ければ谷深し」の米国版が「谷深ければ山高し(Bigger The Drop, Bigger The Pop)」というのは、米国人の国民性が現れているというものです。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年6月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。