5月20日付けのJane’s Defence Weekly によるとフィリピン軍が12輌のATMOS(Autonomous Truck Mounted howitzer System) を導入します。契約は政府間契約です。
ATMOSは砲をあれこれチョイスできますが、52口径のタイプです。採用された車体は6輪のようです。
戦闘重量は21トンで、」乗員は4名、内装填手が2名ですから、19式自走榴弾砲より自動化されており、更に2名が追加できますが、これまた19式と異なってキャビンに収容できます。
19式の開発、調達に当たって本当にこれやカエサルなどの諸外国の装輪自走榴弾砲を調査したのでしょうか。多分やっていません。だから重たく、コストも高いのに3人しかキャビンに乗れない、NBCシステムも機銃もないような胡乱な自走砲を調達したのでしょう。
ネットワーク化も恐らくはATMOSの方が進んでいるでしょう。
実際問題として我が国では最大射程40キロ程度の試射すらできない状態です。
それでどうやって開発したんでしょうか。また19式は8輪、26トン近く、6輪では射撃時の反動をマネジメントできなかったのではないでしょうか。それを実現するための実験もできなかった。しかも重量低減のためにキャブを3人乗りにして、機銃も搭載しない。
開発能力が高いわけではない。
確かに日本製鋼所の砲身の精度は第一級です。それと優れた砲、自走砲を開発する能力があることとイコールではありません。
砲だけを開発し(99式のものの手直し)、システムはイスラエルやフランスなどに委託すればよかったのではないでしょうか。その方が遥かに調達コストも下がり、国内に仕事も落とせました。
ATOMOSは39口径型、ロシアの130ミリM46S、122ミリのD-30もチョイスできます。
19式よりもFH70を流用してATMOSにした方が良かったかもしれません。
何しろ殆ど最大射程で撃ったことがないから砲身寿命はまだあるし、数も多いのでスペアの砲身やコンポーネントも確保できるでしょう。そうすれば格安で調達できたでしょう。19式を見るに実戦よりも国産の自走榴弾砲調達が目的化しているように見えます。
個人装備などもそうですが、最近のフィリピン軍は自衛隊よりも先進的な装備を導入しているケースも少なくないです。「昭和の陸軍」陸上自衛隊はなんとかすべきです。途上国以下という現実を見ようとしない市ヶ谷の人たちのメンタリティが、その一番の障害でしょう。
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Japan In Depthに以下の記事を寄稿しました。
European Security & Defence に以下の記事を寄稿しました。
Hitachi wins Japanese bulldozer contract
東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年6月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。