トランプ大統領が矢継ぎ早に様々な議論を巻き起こす行動を行いました。中国の決定を受けた香港への優遇措置の見直し、WHOからの離脱、SNSを提供する会社の免責を再考する通信品位法第230条の見直しであります。
対香港政策については中国のコロナやファーウェイ問題でいら立ちを見せる西側諸国を更に刺激しました。カナダではファーウェイのCFO釈放が見送られる判決が出てカナダと中国の間の政治的テンションは上がっています。カナダの調査ではファーウェイ社の5Gサービスを国内に整備することに否定的な声が過半数を示すという結果も出ています。
オーストラリアではコロナ中国発生源説の追及を行うという姿勢を明白に打ち出しました。中国は報復としてオーストラリア産農産物の一部輸入規制を行ったもののモリソン首相は「国益に基づく主張を我慢することはない」(日経)と引く気配を見せません。
日本はアメリカのWHO離脱に関して慰留しないスタンスではないかと産経が報じています。
一方、欧州は英国を除き、一体感はなく国ごとに対応はばらつきが出るとみられています。背景には既に中国と切っても切れない関係を築いたところもあるし、ドイツのように自動車産業を通じて関係を強化する動きも見られます。
地球儀ベースでみるとアメリカと一体感を持つ英、加、豪そして日本が一つのグループとして動きます。英国が抜けるEU諸国ではEUオリジナル国であるECSCのメンバー国とその後に加盟した国との立場の違い、あるいは南北間の経済格差や欧州西部と旧共産圏だった欧州東部との社会思想の違いもあります。その中であえてその結束力を維持している理由はキリスト教という共通点だけなのかもしれません。その中で加盟候補国であるトルコはイスラムの国であり果たして宗教の壁を越えられるのか、一つの分岐点に差し掛かっています。
こう見ると世界の主要国は一種のブロック化が進む公算がやはり出てきているように感じるのです。アメリカグループ、EUグループ、そして中国グループです。ここにそれ以外の大国であるロシア、インド、ブラジルがどう反応するか、中東諸国を中心とするイスラム国の動き、更に東南アジア諸国をどう束ねるか等エレメントは非常に多くなります。
1930年代の大不況下、各国は金本位制からの離脱を受けて自国経済の防衛に必死となり、関税競争が始まります。そして通貨圏をベースに世界が5つに分かれます。英米仏独日であります。経済学的には非常に評判が悪いこの体制をブロック経済と言いますが、これがのちのち第二次世界大戦の背景にもなっていきます。
今日の経済情勢、国家間のリンクを考える限り、主要ブロックが今後、サブブロックの取り込みを急ぐことになるとみています。例えば日本は東南アジアを取り込む動きを強化し、アメリカは南米を取り込みたいでしょう。特にブラジルは中国が最大の貿易相手国であり、アメリカとの疎遠な関係もある経緯からどうやってそれを覆すのかという課題が残ります。中国は欧州の一部、例えばギリシャやイタリアの取り込みを急ぎながら一帯一路を推進していくことになるでしょう。
これらが世界経済、グローバル化の観点からマイナスであることは言うまでもないことですが、私には時代の循環として避けがたいサイクルに突入しつつあるようにも感じます。前回は第二次世界大戦までのサイクルでそれを底に米ソ冷戦期間をへて和平が進み、1991年のソ連崩壊を経てグローバル化の花が咲いたのです。
この30年弱の間に起きたことは先進国主導体制からG20にみられる多国間の協調、そして中国の台頭であります。世界はそれらの変化に必ずしも柔軟に対応できないわけで自己利益の確保の手段をどう担保するのか、そのスタンスに差が出ました。中国を潰すとするアメリカグループに対してドイツのように中国にそれでも取り入り、共存を図る国もあります。これがG7などでの意見の相違からまとまらない世界へと移行していくのでしょう。
トランプ大統領と習近平国家主席という双方負けず嫌いで政治的でアグレッシブで敵対する関係はパーソナリティによるところもありそうです。
いま、コロナで新しい社会が生まれるといわれています。しかし、もっと俯瞰すると地球儀ベースで更に大規模な変革が起こりつつあり、コロナが更にその背中を押しているように感じます。我々はどこに向かうのでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年6月4日の記事より転載させていただきました。