『SUNNY 強い気持ち・強い愛』をやっと見ることができましたよ

全俺が泣いた。この10日くらい、辛いことが多かったり。逆に仲間に励ましてもらったり、保育園が再開して緊張の糸が切れたりもしており。そんなタイミングで「花金」の夜は、自室で映画三昧。中でも『SUNNY  強い気持ち・強い愛』が最高すぎて。そう、劇場に行く時間がなかった上、諸事情で発売&配信が遅れていたのだ。

自分が大学生→社会人だった90年代の東京。渋谷系もアムラーもどちらかというと、距離をおいて傍観していた方だけど。主人公の広瀬すず&篠原涼子が札幌から内地に出てきた自分と重なる部分があり。

なんだろう、この時期の女子高生の無敵な感じは。青春の甘さと苦さ、きらきらした輝き、それがこわれる感覚がすべて凝縮されており。さらに女性同士の友情。しかも、当時、なんとなくかけていたCDTVで聴いていた音楽の数々。そりゃ、泣くだろう。

10代はプロレスと、音楽と、新書&小説にどっぷりだったのだけど。私は昔から自分の「普通すぎる」「無難すぎる」点が苦手で。珈琲とタバコが似合う、硬派でガチなあっという間に亡くなった父と、才色兼備で天が二物を与えたタイプの母にずっとコンプレックスを抱いており。いつも、自分の理想と大きく離れた、自分が望むほども賢くもかっこよくも強くもない自分がいやでしょうがなく。なんせ、新日本プロレスとジャニーズ事務所を受けることをやめてしまった自分が嫌いで(東大は行きたくなかったのだけど)。そういえば、ラウドネスとX JAPANがメンバーチェンジしたときも応募はしなかったわけで。

でも、自分なりにもがいていたら、あとで聞くと「あいつ、ヤバいな」と言われていたようで。現在に至る。

そんな自分に対して、この映画は若さと仲間というかけがいのないものの素晴らしさを突きつけられたような気がし。なんだろう、今までのもがいていた人生はと何度も泣いてしまった。なんで、私は90年代、東京の女子高生じゃなかったんだろうと、自分を激しくせめてしまった。

まあ、新井浩文問題は…。出演者と作品の切り分けは必要だと思う派だし、彼のしてしまったことも、その罪と、容疑段階で様々な事実が暴かれ過剰に叩かれた点は切り分けて考えるべきだと思うし、推定無罪の原則を大事にするべきだと思う派なのだけど。そして、エンタメもサブスクモデルに移行する中、プラットフォーマーが作品をバンする権利を持ち、その力によりコンテンツが過剰にコントロールされることや、薬物問題など社会復帰のための治療が必要な問題の場合は、本人の作品が否定され、収入も絶たれる件が気になっており。なんせ、ファンも困る。

さて、彼はこの作品で何をしたのだろう。実は45秒くらいしか登場しない。渡辺直美の上司という設定で。ただ、ブラック企業の管理職という設定で怒鳴り散らすシーンがあり。別に彼目当てでみる作品ではない。間違いなく。そうであるがゆえに、偶発的に目に入るわけで。しかも、女性の部下を罵倒するシーンなわけで。彼がしてしまったことと重ねると、さすがに判断が迷う件だと感じた次第だ。たしかに、悩ましい決断だったろう。

とはいえ、大の大人が笑って泣けるドラマだった。ありがとう。


編集部より:この記事は千葉商科大学准教授、常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2020年6月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。