「6月の定時株主総会は完全延期すべきである」といった私の予想に反して(?)多くの上場会社が6月に定時株主総会を開催するようなので、そうなりますと東京証券取引所が公表した「上場子会社のガバナンスの向上等に関する上場制度の整備に係る有価証券上場規程等の一部改正について」(本年2月7日施行)への対応が喫緊の課題になりますね。
上記規程の改正点として、グループ経営の考え方等の開示の充実(コーポレート・ガバナンスに関する報告書)が盛り込まれており、2020 年 3 月 31 日以後に終了する事業年度に係る定時株主総会後に提出するコーポレート・ガバナンスに関する報告書から適用されることになっています。ということで、とりわけ上場子会社をグループ内に抱えている上場会社の取締役会では、社外役員を交えて、様々な議論がなされているのではないでしょうか。
もうすでにガバナンス報告書を更新して開示している企業もありますので、これらの開示例を研究しておりますが、これがなかなか興味深いです。本日はあまり時間がないので詳細はまた別途エントリーで述べますが、「グループ経営の考え方」については(業種、業界に関係なく)3~4つのパターンに分かれています。また、それぞれのパターンによって、開示にあたってどのようなプロセスをたどって、当該パターンの結論に至ったのか、というところが開示内容から判明するものと全く不明なものに分かれています。
コロナ禍における機関投資家の関心として、投資先企業のガバナンス改善が挙げられることが多いのですが、この「グループ経営の考え方」というのはガバナンス改善への本気度を測るための試金石になりうるような気がします。それほど大きな上場会社ではなくても、「うーーん、なるほど、この会社は真剣にガバナンス改革に取り組んでいるみたい」と、思わず唸りたくなるような開示例もあります。「横並び主義」が通用せず、御社の正解は、投資家との対話によって、御社独自に作り上げていくべきものかもしれません。
編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2020年6月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。