米国版“ミセス・ワタナベ”、ウォール街を驚かせる個人投資家①

リーマン・ブラザーズが破綻する数年前、世界の為替市場で「ミセス・ワタナベ」がその名を轟かせました。日本の主婦達を中心とした個人投資家による為替証拠金取引で、市場を動かす影響力をみせ米欧のメディアがそう名付けたわけですが、あれから15年が過ぎ、米国株式市場でも同様の事態が発生しつつあります。

トレーダーズ・マガジンは6月4日、「個人投資家ジョン・Q・パブリックが株式市場に存在感を示した」と報じました。ジョン・Q・パブリックとは米国で一般人の総称を指し、この記事ではコロナ禍で存在感を示す投資家として、彼らを挙げたわけです。日本でも、5月22日に破綻申請を行ったレンタカー業者大手ハーツの乱高下で、その余波を実感した方も多いでしょう。

米国で個人投資家が台頭してきた理由は、主に2つございます。1つは、ネット証券の取引手数料無料化です。口火を切ったのは口座数約1,230万件を抱えるチャールズ・シュワブで2019年10月に無料化に動き、競合他社も追随しました。

その結果、チャールズ・シュワブの顧客資産流入額は2019年10月に前月比352億ドルと、過去半年の流入額を約2倍近くにのぼりました。さらに、コロナ禍でS&P500が最高値から一時35.4%も急落する過程で個人投資家が新たに株式市場に参入したとみられ、2020年3月の証券口座数は同28.3万件の増加と、通常の約2倍に達しています。

チャート:チャールズ・シュワブの2019年10月と20年3月の動向

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(作成:My Big Apple NY)

特に3月の平均出来高は、個人投資家の参入を一因に前月比74.3%も急増していました。

チャート:3月は急出来高が大幅増

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(作成:My Big Apple NY)

こうした個人投資家の売買は、3月27日に成立した景気刺激策が盛り上げた可能性があります。1人当たり1,200ドルの小切手が支給された結果、支給された週とその前の週で送金動向を比較すると、高所得者だけでなく中低所得者層の間でも証券取引が上位にランクインされていました。

チャート:小切手の使い道

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(作成:My Big Apple NY)

もちろん、個人投資家が市場に参入しただけでなく、機関投資家による売り買いが出来高を押し上げたことでしょう。ただ、やはりロビンフッドの台頭に挙げられる個人投資家の存在は見過ごせません。このお話は、次回お伝えしますね。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年6月23日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。