都知事選:から騒ぎ?暗闘?内田ドンJr.を巡る自民VS維新の綱引き

アゴラ編集部

東京都知事選(7月5日投開票)は折り返しを過ぎ、2度目の週末に突入した。各種情勢調査では、現職の小池百合子氏が圧倒しているが、小池氏が前回の得票率(44.49%)以上を得られるのか、そして2番手に誰がつけるのか、都知事選後の国政の流れを占う意味でも注目される。

都知事選の帰趨を決める要因のひとつが、自主投票を決めたことで「草刈り場」と化した自民党支持層の動向だ。昨年の参院選で、東京都内では約187万票の自民比例票が出ている。ここまで報道各社や政党の情勢調査では、小池氏が7割以上は固めたとされるが、反小池派の多い自民党の地方議員たちに近い組織票は、少なくとも50万以上を擁する。

そうした中、選挙現場で波紋があったのは、日本維新の会が推薦する前熊本県副知事、小野泰輔氏の陣営。小野氏は27日午後、秋葉原で街頭演説を行ったが、マスコミ各社が数多く詰めかけていた。というのも、地元・千代田区の自民党区議、内田直之氏が応援演説に駆けつけるのではないかという情報が広がり、報道陣は色めき立っていたからのようだ。

報道陣の取材に応じる内田直之・千代田区議

内田氏は自民党所属。もし演説をすれば、自民党の現職議員で初めて小野氏支持を表明するばかりでない。あの「都議会のドン」内田茂・元都議の娘婿ということで、表向きは自主投票を掲げているなかで、ドン内田茂氏の意向が働いているのではないかという政局的な意味合いを多分に含むことになる。

はたして内田氏は選挙カーのすぐ近くまで現れた。小野氏本人の演説が終わり、いよいよサプライズゲスト登場かと報道陣は身構えたが、結局内田氏は登壇することはなかった。小野氏や鈴木宗男氏らと握手だけはかわした内田氏は、報道陣に取り囲まれると、「近くなので観に来ただけ」などと多くを語らず、立ち去った。

小野氏と握手する内田氏

複数の政界関係者によると、内田氏は直前まで登壇する方向で話が進んでいたが、直前になって「待った」がかかったようだ。維新側は「会場にきてくださっただけで十分」と成果を強調。一方で、自民党都連側は、今秋にも取り沙汰される解散総選挙や都議選において、維新の東京進出に拍車がかかるのではないか、と警戒モードを強めている。都知事選序盤、小野氏が都議会自民党の控室をアポなしで訪問したことに「パフォーマンスだ」と反発する都議もいるという。

結果として、マスコミが期待した「ドンJr.の応援演説」は実現しなかったが、この日の“から騒ぎ”は、自民党関係者の「反小池」の本音が見え隠れしつつ、維新との水面下の激しい綱引きが行われている様子がうかがえた。都知事選も後半、すでに各党は選挙後を見据え、次期衆院選、都議選へとつながる今後の政局を意識した動きをしている模様だ。