マイナンバーカードは出来の悪い子供ではありません

福田 峰之

コロナ禍の中で、政府も数々の支援策をつくっています。命と経済の緊急事態なので、今出来ることをするしかありません。衆議院議員をやっていた経験からすると、政府・与野党ともこうした緊急時には、早期に効果的な対策を行いたいと思うものです。

一方で、その為には、想像力を持って事前に施策を整えていく事が必需になるのです。政治は「今」を解決する為にあるのではなく、「これから」をつくるためにあります。「これから」というのは、いつか「今」になるので、結果的に「今」を解決することにつながります。「今」だけの「今」はないという事です。

こうした視点でマイナンバー制度を改めて考えてみたいと思います。マイナンバーカードでの給付金申請で、暗証番号がわからない人がいて、自治体の窓口が大混乱をきたしたとか。口座番号を政府が知らないから、手続きが遅くなっているとか。次なる給付金が生じた場合に、再度、口座番号を聞くのはおかしいだとか。家庭事情に応じて給付金額を変えないのは不公平だとか。

こうした批判を新聞やTVや雑誌などで、最近よく見かけます。マイナンバー制度がスタートする際に、マイナンバー担当の内閣府大臣補佐官として、この施策を推進してきた者として、批判でもメディアで取り上げられて、国民的関心が高まることは良いことだと思います。そして、ここまでの盛り上がりは、制度開始直後以来だと思います。

マイナンバー制度のあり様は、当時、与党と共に将来を予測し、様々なケースを想定して「マイナンバーロードマップ」をつくり、進めてきました。つまり、マイナンバー制度を日本におけるデジタル社会のプラットフォームにする事を目指してきたのです。

今、問われている課題は、当時、想定していた範囲内であり、本来であれば、解決できていたことです。マイナンバーカードは、暗証番号だけでなく、生体認証も取り入れること。銀行口座にマイナンバーを紐づけること。マイナポータルに政府からのお金を受けとる口座を登録すること。所得・資産を把握して真に貧困状況にある人たちに手厚く社会保障を届ける事。申請方式でなく、プッシュ方式で、お金を振り込むこと。残念ながら、今回のコロナ対策では機能しませんでした。

理由はあります。政府のスタート時点での広報がマイナンバーの世界観でなく、手続きに偏ってしまったこと。当初、マイナンバーカード交付時にシステムダウンしたこと。正しくないことが、実しやかにメディアに乗って広がってしまったこと。全省庁が本気でなかったこと。地方自治体を巻き込めなかったこと。僕の反省を込めてです。

政府も自治体も企業も国民も、マイナンバーの世界観を改めて共有した上で、マイナンバー、マイナポータル、マイナンバーカードの使い道を整備すべきだと思います。

Withコロナを通じて、マイナンバー制度をデジタル社会のプラットフォームしなくてはならないことを痛感された人も多いのではないでしょうか。災害、パンデミック等、社会的混乱が生じた時でも、通常時でも、行政サービスが公平に、スピーディーに、プッシュ方式で行われるように、今こそデジタル社会に振り切るラストチャンスでもあります。

マイナンバーカードは出来の悪い子供と決めつけてはいけません。秘めてる才能はあるのです。皆で育て、支えることによって、無くてはならない国民のナショナルデジタルプラットフォームに成長します。制度は政府だけで育てられるものではありません。


編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2020年6月27日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。