連載③ 日本の起死回生の一打~新都(メガ首都圏)構想~

朝比奈 一郎

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わが国の希望が、今も確実に息づいている現場人の使命感・責任感、そして、やや薄れつつある現状への熱い危機感だと述べた。そんな中、より具体的な事象として特にやはり期待が持てるのは、奇妙な一致だが、アメリカ同様に日本でも主に西の動きのような気がする。

吉村洋文大阪府知事(本人ツイッターより)

コロナ下で最も評価を上げた首長である吉村知事は、大阪・近畿圏での基盤を確実なものにし、例えば今秋に予定されている大阪都構想についての住民投票などは成立する可能性が高い。久しぶりに日本が消費電力当たりの演算能力世界一を奪還したとして国民に希望をくれたスーパーコンピューター富岳は、神戸市に設置されている(理化学研究所計算科学研究センター)。静岡県との交渉が難航して開業延期にはなってしまったが、日本が誇る各種テクノロジーを活用するリニアモーターカーは西に延び、東京-名古屋間を約40分、東京-大阪を1時間強でつなぐとされている。西に日本の様々な希望が見えてきている。

更に言えば、フロンティアは別に西だけに限る必要はない。環境省・小泉大臣肝いりの温泉地テレワーク事業などが推進されはじめているが、コロナ下で、多拠点居住・BCP(事業継続計画)的文脈でのバックアップ機能など、地域への拠点分散が進み始めている。慶応義塾大学教授の安宅和人氏によれば、今後、いわゆる「開疎」化が格段に進展していくとのことだが、この流れはもはや不可逆であろう。

Rickie/写真AC

今こそ、東京だけではなくその西の力、いや、西に限らず、各地に延びている新幹線網なども活用しての東や北の力を活用した、新しい大首都圏構想を打ち出して実現させてはどうか。リスク分散、景気浮揚、地方創生、どの観点をとっても有益であり、働き方改革にもつながる一挙両得どころか、三得も四得もある起爆剤となる。

具体的には、政府としては、各地の要望なども踏まえながら、霞が関の各省庁や外郭団体などを例えば東京から約1時間圏などに移す計画を策定し、移せるところから移して行けばよい。かつて経産省で(特許庁出向時)、移転に猛反対する職員と議論した経験などを踏まえれば、東京から一部とはいえ省庁等を移転させることは容易ではないが、ただ、穴さえ開けば、つまり、ある省庁が、風光明媚な環境でテクノロジーも駆使して快適に仕事や生活を送っているということになれば、最初は抵抗していた他省の中にも、徐々に移っても良い、という流れが出来るであろう。

既に安倍政権になってから、消費者庁の一部(徳島県)、総務省統計局の一部(和歌山県)、文化庁ほぼ全体(京都府)などの移転が決まっているが、こうした動きを加速させることが重要である。やがては、行政機関だけでなく、司法(最高裁等)や立法(国会等)移転にもつながり、関係する企業・団体等の移転も進むであろう。

例えば、栃木県那須塩原市に環境省があり、長野県軽井沢町に観光庁があり、名古屋市に経済産業省があり、大阪市に財務省があり、、、、という具合だ。ほとんどの会議や打ち合わせはオンラインで遠隔で可能だし、どうしても集まる必要があれば、いざ鎌倉的に、「いざ東京」ということで、リニアが開通する将来は、1時間くらいで集まれるという具合である。

かつて、90年代に首都機能移転が議論されていた際、東京をつくばなど60km圏内まで拡大させようという「展都論」があった。通信や交通の技術が格段に進歩し、今や60km圏内に止める必要はない。当時、展都論以上の拡都論もあったが、更にもっと大きく広げて考えれば良いわけであり、私が知る限り、既存の都市をベースに上記のような大規模なメガ首都圏を作ろうという動きは、世界ではまだ顕在化しておらず、日本がその嚆矢となるチャンスがある。

「東京に吸収される」(各地が「東京化」に抵抗する際に使うセリフ)ということでもなく、「東京から首都が動く」(東京が首都機能移転に反対する際に使うセリフ)ということでもない、新しい巨大な新都づくり。ネーミングなどは、国民から募集して決めても良く、今こそ政治の出番でもあると感じる。