10分で読める近代五輪全史②(1968年メキシコ五輪から)

365日でわかる世界史 ― 世界200カ国の歴史を「読む事典」』(清談社)で書いた夏季五輪の歴史のハイライト。後編はメキシコ大会からだ。さらに、次回は、東京五輪再延期問題について少し論じるが、都知事選挙でも話題になっている2024年は考えにくいと思う。

第19回:メキシコシティー(メキシコ、1968年)高地での影響が注目されたが、米国のビーモン選手が桁違いの世界新記録。走高跳のディック・フォスベリーが背面跳びで金メダルを獲得した。近代五種に出場したスウェーデン選手がドーピング検査違反者第1号となった。

第20回 :ミュンヘン(ドイツ、1972年)選手村でイスラエル選手団が人質となり救出作戦の失敗で9人の死者が出た。バスケットボール決勝でアメリカがソ連に終了間際に逆転され判定に異を唱えて表彰式をボイコット。

第21回:モントリオール(カナダ、1976年)ルーマニアのナディア・コマネチが史上初の10点満点を連発。IOCバッハ会長がフェンシングで優勝した西ドイツのメンバーだった。開催国カナダは金メダルなし。

ナディア・コマネチ(Wikipedia)

第22回:モスクワ(ソ連、1980年)アフガン戦争を理由にアメリカや日本などがボイコット。女子カヤックの東ドイツのビルギット・フィッシャーはこの大会から12個のメダル獲得。キューバのステベンソンが男子ボクシングヘビー級で3連覇。 –

第23回:ロサンゼルス(アメリカ、1984年)カール・ルイスが100m、走り幅跳びなど4種目で金。中国が参加し金メダル獲得数で4位になった。

ロス五輪で4冠に輝いたカール・ルイス(Wikipedia)

第24回:ソウル(韓国、1988年)男子100mでは、カナダのベン・ジョンソンが9秒79の新記録でカール・ルイスに大差を付けたがドーピング検査で陽性反応が出て金メダル取り消し。開会式で聖火台でハトが焼け死んだのではないかと話題になった。ボクシング決勝で韓国選手が金メダルを取ったが審判を買収していたことが発覚。

第25回:バルセロナ(スペイン、1992年)スペイン統一とコロンブスのアメリカ大陸発見から500年目のこの年には、セビリアで万博がバルセロナでオリンピックが開かれた。バルセロナはサマランチIOC会長の地元でもあった。プロ選手に解禁されバスケットではアメリカのドリームチームが優勝した。

サマランチ(Wikipedia)

第26回:アトランタ(アメリカ、1996年)ボクシングのスーパーヘビー級でウクライナのクリチコが金メダル。グレコローマンレスリングの「霊長類最強の男」カレリン(ロシア)が金。

第27回:シドニー(オーストラリア、2000年)聖火リレーの最終点火者は先住民アボリジニ出身者が務めた。水泳自由形のイアン・ソープが3個の金メダル。サッカーはカメルーンが金。

第28回:アテネ(ギリシャ、2004年)準備遅れが心配されたが、結果的には大成功だった。テコンドーで陳詩欣が台湾として史上初の金メダル。中国の劉翔が110メートルハードルでアジアで初のトラック競技での金。

第29回:北京(中国、2008年)ジャマイカのウサイン・ボルトが100mと200mに優勝。競泳のマイケル・フェルプスは9日間で17レースに出場し8個の金メダルを獲得してこれから3大会にわたって2人の黄金時代に。

ウサイン・ボルト(Wikipedia)

第30回:ロンドン(英国、2012年) 開会式での「ジェームズ・ボンドにエスコートされた空飛ぶ女王陛下」の演出が話題に。。南アフリカのキャスター・セメンヤが女子800mを制覇して話題になった。

第31回:リオデジャネイロ(ブラジル、2016年)ロシアの国ぐるみのドーピング疑惑が発生したことから、WADA(世界ドーピング防止機構)がロシアの選手のオリンピックへの出場停止を勧告し、IOCはロシア選手団389人のうち271人については、個人の資格での出場を認めた。ブラジルはネイマールらのサッカー、男子バレー、女子柔道のシルバなど7個の金メダルを獲得した。

東京で開催される2020年夏季オリンピックでは、33競技339種目が実施される。このうち、定例化されている「非追加種目」が28競技で、開催地の組織委員会提案の追加種目が5競技という数え方になっている。1964年の第18回東京大会では18種目であった。ただし、競技の統合や分割があるので計算は複雑だ。