日本の経済成長は東京が引っ張っている、というのは実は真っ赤な嘘だった。
最新の都民経済計算年報(平成29年版)によると、2006年度から2017年度までの全国の成長率は3.5%だが、同じ期間の東京都の成長率は1.5%に過ぎない。同じ期間に、東京都の総生産の全国シェアは19.8%から19.4%に下落した。人口シェアが、同じ期間に9.9%から10.8%に増えているにもかかわらず、だ。
これまで東京では、全国に先駆けて、容積率の緩和を始め様々な特例が適用され、また、東京オリンピックを始め様々な公共投資が行われてきた。しかし、それでも、成長率が低い。
なぜだろうか。
集積には、メリットだけでなくデメリットもある
東京都市圏は、世界最大の都市圏。人口1億人以上の国では、日本は、最も首都の都市圏に集住が進んでいる国だ。
その結果、通勤時間の超長時間化、待機児童問題、待機老人問題などさまざまな問題が生じている。コロナにより、集住のデメリットが改めて顕在化された。
毎日、1~2時間かけて通勤する中で生産性が上がらないのは、ある意味当然だろう。
昔から、地方は東京と比べて、職住接近で、待機児童や待機老人の問題もなく、暮らしやすいと言われてきたが、実はビジネスのイノベーションの多くも地方から生まれてきた。
トヨタやパナソニックという製造業だけでなく、消費人口に依存する小売業だって、ヤマダ電機は群馬県、ユニクロは山口県が発祥だ。
地方には、余白がある。自然と向き合う中で課題が見えやすく、家賃や人件費も安いからスモールスタートもしやすい。
東京から地方へ、というと東京と地方の格差を埋めるため、あるいは国民の生活クオリティを高めるため、という文脈で捉えられやすいが、過度に集積しデメリットが顕在化している東京の成長力を高めるためにも、分散の流れを後押しする必要がある。
江戸時代のように帰農令はさすがに出せないだろうが、企業や大学の地方移転に対する大胆な税財政支援や首都機能移転・分散が、ポストコロナの時代だからこそ求められているのではないか。
編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2020年7月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。