先週、機関投資家の方々と(改正会社法の条項に関連する)意見交換をする機会がありました。私個人とては、とりわけ役員報酬に関する令和元年改正会社法の改正事項についての運用会社の方々の意見が興味深かったので、またブログ執筆の時間が取れる時に別途詳細にご報告したいと思います。
ただ、役員報酬に関する会社法改正後の実務については一言だけ備忘録程度に記しておきたいと思います。先日(7月13日)、上場会社の役員報酬はダブルチェックの時代が到来する、といったエントリーを書きましたが、いろいろと意見交換を行うなかで、やや機関投資家の方々とは意見が違うことに気づきました。
株主の関心は「(開示された報酬決定方針に基づき、個別の取締役の報酬が高いのか、低いのか」といったところでのチェックではないようです(それだけの時間的余裕はない、というところか)。むしろ会社が示す事業戦略と、個々の取締役のもらっている報酬との関係が(説明責任を通じて)明確になることへの期待が高いことのようでした。
役員報酬の重要事項が事業報告に記載されるようになれば、機関投資家は「我々に約束した中長期の事業戦略を『うまくいっている』と評価するのか『十分実行できていない』と評価するのか、その評価に関する取締役会の姿勢について知りたい」ということのようです。
つまりこれからの役員報酬の決定は、機関投資家にとっては事業経営に関する説明責任を尽くすことと密接に結びつくわけでして、「これだけ報酬を受領することが正当である、と取締役会が評価しました」という説明を前提に、個々の役員の信任を評価する、というところが大切なポイントのように思いました。
業績連動性報酬を採用する企業が増え、また連動報酬の比率がどの企業でも高まりある中で、取締役会が本当に役員報酬の決定について関与(具体的な決定もしくは再一任のプロセスの監視等)しているのかどうか、令和元年改正会社法の施行はまだだいぶ先かもしれませんが、今からでも取締役会の関与の在り方について、きちんと議論(?)しておく必要があると思います。
私個人の考えとしては、このたびの会社法改正によって、役員報酬への取締役会の監督機能は少しばかり高まるのではないかと思います。
編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2020年7月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。