観光業がヤバい。3月以降の売上高が、ほとんどゼロに近くなっているところもある。大手の旅行会社も、昨年比売上高が数%という(数%「減」ではない、念のため)。
休業中も、当然ながら人件費などの固定費はかかる。もともと利益率が高くない観光業では、これから廃業が一気に進むのではないかと危惧している。
観光業とよく似た構造の飲食業について、周栄行さんが非常に分かりやすい記事を書いているので、ぜひ一度見てほしい。飲食業では、一月売上がなくなると、半年分の営業利益が全てなくなる場合もあるという。
観光業は、裾野が広い産業だ。特に、良い宿は、地域の文化の発信拠点であり、旅行者にとっては地域の文化の試着室だ。農業も、漁業も、工芸も、地元に良い宿があるからこそ、良いものを良い価格で提供することができる。
観光業には、2つの大きな特長がある。
1つ目は、他のほとんどの商品は、お金をかけて時間を短くしようとするが、観光業ではお金をかけて長い時間楽しもうとする。長い時間、お客との接点を持つことができるので、これからの観光業は、ますます地域の良い物を体験し、購入する文化の試着室としての役割を担うだろう。
2つ目は、他のほとんどの商品は、時間が経てば経つほど価値が下がるが、観光業では価値が高まる要素があること。かつて有名な●●が宿泊した、将棋の名人戦が行われたなど、歴史が価値を生み出す。
変化が激しい時代だからこそ、すぐに陳腐化する分野ではなく、時間が経てば経つほど価値が高まりうる分野に投資すべきだし、特に産業基盤が乏しい地方では、これからも観光業が経済や文化の核になるだろう。
3月以降、売上高が大幅に減少している観光業を支援するのは、夏休みの今しかない。秋以降では、廃業が加速し、遅過ぎるかもしれない。
Go To キャンペーンには、「コロナの感染者が増える中で、更に感染者が増えるのではないか。」などの批判もあるが、
何事も正しくおそれることが重要で、旅行する人も、受け入れる人も、これまでのクラスターの発生状況等を踏まえながら、感染症対策を徹底すれば、いたずらにおそれる必要はないと思う。都内でもリスクが高い行為や場所はたくさんある。むしろ、感染症対策を徹底した個人や家族の旅行の方がリスクは低いだろう。
観光業の灯を消してはならない。
編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2020年7月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。