スペインの高級リゾート地マルベーリャ(Marbella)などが面している地中海沿岸コスタ・デル・ソルのホテル連盟会長ルイス・カリェホンは「現状から判断して、25%のホテルは廃業を余儀なくさせられるようになる」と指摘し、「悲観的になっているのではなく、現実的に見て(コロナ)感染が再発しないという観点からだ。それが再発すれば事態はさらに悪化することになる」述べた。これは外国からの観光客の訪問が今後も見込めそうにないという現状を前にしての厳しい予測だ。(参照:malagahoy.es)
実際、マルベーリャの5つ星ホテルの一つドン・カルロスは従業員の解雇を開始した。夏以降は他のホテルでも従業員の解雇が増加すると予測されている。というのも一番稼ぎ時の夏シーズンに観光客の利用が見込めないことから十分な売上が見込めず、経営が深刻になることが予測されるからである。
コスタ・デル・ソルの7月のホテルの利用率は前年比37%、8月は43%と見込まれている。これでは採算は取れない。(参照:okdiario.com)
実際、ルイス・カリェホンに8月末まで営業すると伝えて来たコスタ・デル・ソルのホテルは、全体の僅か18%にあたる69のみだそうだ。即ち、残りのホテルは閉店したままである。営業しても十分なお客が見込めないということで赤字を回避するためである。
ルイス・カリェホンは今回のコロナ危機による影響は3つのステップを踏むことになると指摘している。最初のステップは、リゾート地への顧客の訪問がなく一時的にホテルの営業を停止。これは封鎖期間中のホテルが閉鎖を余儀なくさせられたことで見ることが出来る。
2番目のステップは、封鎖が解除されたあとはホテルの利用客が徐々に増加して行くと楽観視されていたが、実際にはそのような事態になってはいないし、その可能性もない。だから封鎖が解除になっても営業を再開していないホテルが多くあるということだ。
3番目のステップは、今夏のホテル利用客が不十分で売上不足から9月には支払い能力が欠けるようになる。
ということから、25%のホテルが廃業を余儀なくさせられるようになると彼は指摘したのである。
コスタ・デル・ソルを中心に4つのホテルのオーナーであるミゲル・サンチェスは「英国とドイツのツアーオペレーターは航空券を多く販売している。しかし、売っている相手は地中海沿岸のリゾート地に家を持っている人たちで、ホテルを利用する観光客への航空券の販売は5%にも満たない」と指摘されたそうだ。
彼はホテルのボーイの仕事から始めて、アライ・グループのゼネラルマネジャーになり、その後独立してMSと呼ばれるホテルを設立したという人物で、この業界には熟知している。その彼が指摘するのは、「コスタ・デル・ソルは外国からの観光客に多く依存している。スペイン人観光客は週末や7月20日から9月20日までの間のバケーションを利用しての訪問で限定されているということだ」
彼によると、7月から9月までの3カ月間で年間の売上の80%を占めているが、外国からの訪問客に殆どを依存しているという。それが今夏は全く期待できないということだ。そして、彼は「7月の利用客が少ない上に、予約のキャンセルの方が予約よりも多い」「8月の予約から動きあるように見えるが、それはスペイン人が対象で、ヨーロッパからの予約は今もない」と語っている。(参照:www.malagahoy.es)
予約のキャンセルという点では、英国のツアーオペレーターが旅行のキャンセル数がここ最近通常の2倍に増えていると指摘しているが、それはスペインでコロナの感染が再拡大しているのが関係しているようだと推察している。この時期の予約は売り上げを増やすためにキャンセルするのも無料でできるようになっていることも、キャンセルが増えている要因でもあるとしている。(参照:preferente.com)
このような厳しい現状を前に、ホテル業界でも被雇用者への休業補償を今年12月まで延長するように政府に要望している。今のところ、政府は9月までの延長を受け入れている。
ミゲル・サンチェスは「企業にそれを負担させることはできない。それに耐えるだけの経済的余裕がないからだ。どの企業も来年4月から5月まで持ちこたえられるように努めている」と述べている。その為にも、政府が従業員の給与の負担を12月までして欲しいということなのである。それが出来ないとなると、多くの企業は従業員の解雇を余儀なくさせられることは必至だと見ている。
零細企業の多いスペインで売上が十分でないのに従業員を雇用し続けるだけの資金的余裕はないということなのである。一方の政府にも資金がない。コロナ危機で歳出が多く、しかも財政赤字も増えるということでEUからの救援金を頼りにしている。
今年後半のスペイン経済は厳しい状況に追い込まれるようになるのは必至だ。スペインのGDPの65%を占める観光などのサービス産業の現状からも明白である。