世界全体の感染者数は2000万人を超え、死者は70万人超で、日本の感染者数も5万人を超えた。感染拡散抑止と経済活性化の両立など完璧にできるはずもない。白色と黒色を混ぜれば、灰色になる。この灰色をいかに薄く白い色にするために知恵を絞るのかが政治の責任だ。
しかし、国のトップは首をすくめた亀のように姿を現さない。仕方なく記者会見をしても、気に食わない質問を遮る始末だ。これを書いている瞬間に、沢田研二さんの「勝手にしやがれ」が流れている。多くの人が「勝手にしやがれ」と感じているだろう。勝手にしやがっている若者には困ったものだが。
そして、国レベルでも個人レベルでも、差別が起こっている。東京の感染者数は約15,000人と全体の3分の1弱を占める。人口は日本全体の約10%だから比率を単純に比べれば、東京は割合的に高いことは間違いない。しかし、20-30代の人口密度を考えれば、この程度の数字は東京をのけ者にするほど高い数字とは言えない。実体のないコメントを続けている都知事にも失望だが、国と都知事が対立しているだけでなく、県知事でも帰省に関して意見が分かれている。
「虹のステッカーを張っている」店で感染者が出れば、都が責任を取ってくれるというのか?テレビで都知事がこれを紹介するたびに、これがどないしたんやという思いが募る。ステッカーを張ることで行政の責任は果たされるのか?
さらに、悲しいことに、帰省した人たちに対して、差別的な言動も報告されている。東京差別も、帰省者差別も、国の無策のツケだ。ボヤキ漫才なら。「責任者出てこい」と突っ込む場面が盛りだくさんだ。。
そして、Go To キャンペーンから東京を排除すれば、その効果は半減し、運輸業界、観光業界の苦境は火を見るよりも明らかだ。移動中、観光中は手洗い、マスクなどでリスクを最小化できるし、食事は非接触のデリバリーにすれば、リスクを大幅に低減できる。
自粛を求めるだけで、困っている人たちにはほぼ何の手も差し伸べない政府や行政。動かなければ感染を抑え込むことができる。こんなことは全国民すでに承知している。そして、多くの飲食店は限界まできているように思えてならない。
どんな形で安心を提供するのか少しは知恵を働かせばといいと思う。PCR検査はいつまでも広がらないのは、行政の怠慢だ。しかし、いつでもどこでも希望すればPCR検査を受けることができるようにするべきだと無責任に言うのは、馬鹿の戯言だ。
1回の検査に1万円としても、1億回(国民一人1回)の検査をすると1兆円の経費がいる。メディアで流されているのは1回数万円なので、「いつでも誰でもどこでも」を実行するには10兆円を超える予算が必要だ。こんな計算もできないで寝ぼけたことを言っているコメンテーターなど消えてほしい。
どのような人に対して国が負担して、どのような人には自己負担を求めるのか、線引きをして「検査と隔離」を進めるのが不可欠だ。専門家にも政治家にも、国の命運を担っているという責任と覚悟が伝わってこない。
テレビを見るたびに、軟体動物のような人たちがクニャクニャとはぐらかす姿を見せつけられてうんざりだ。質問に真正面から答えず、すれ違い答弁が多すぎる。ウナギのようにヌルヌルと逃げ出す政治家や専門家しかいないのか?
委員会や審議会で決まったことに対する愚痴を雑誌で語るのも恥さらしだ。会議の場で自分の意見を述べ、容認できない結論でも黙って受け入れるのか、断固反対として委員を辞すのが筋だろう。骨のある人物が出てきてほしいものだ。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年8月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。