終戦75周年記念日:コロナ禍の沖縄を支援しよう

中村 祐輔

太平洋戦争は1941年12月8日に始まり、1945年8月15日に日本が降伏して終わった。12月8日は私の誕生日であるので、毎年、戦争が始まった日を意識せざるを得ない。当時のABCD(アメリカ、イギリス、中華民国、オランダ)包囲網が、資源のない日本を窮地に追い込み、それが戦争勃発の一因となったが、今、トランプ大統領はそれに近い動きを中国に対して見せている。中国の覇権主義的な動きは好きではないが、米中戦争のリスクがかなり心配である。

終戦記念日と呼ぶ日の真実は、日本の降伏の日だ。終戦には間違いはないが、明らかに敗戦の日であり、米国の日本占領が始まった。戦争が終わった日に生まれた人でも、75歳になったのだから、戦争が記憶に残る日本人は、戦争を知らない日本人に比べて圧倒的に少なくなった。

靖国神社サイトより

昨日は用件があって、靖国神社の近くに行った。靖国神社を目にするたびに、私は、戦争で命を落とした人々に恥じない生き方をしているのかどうか考えこんでしまう。コロナ感染に対応している政治家・官僚・専門家たちは、国の犠牲になった方々に申し訳ない気持ちはないのだろうかと思ってしまう。沖縄では、膨大な数の戦争犠牲者が出た。そして、1972年まで米国の支配下にあったし、今なお多くの米軍の基地がある。

私が大学に入学した時には、依然として沖縄は米国の支配下にあり、沖縄からの内地留学制度があった。そして、沖縄に行くにはパスポートが必要であった。今、その沖縄が大打撃を受けている。観光産業で経済が回っている県であり、医療インフラも十分でない県が、コロナ感染によって喘いでいるのだ。

短絡的なメディアが、東京よりひどい、沖縄は危険だと騒いでいる。Go To キャンペーンなどすれば、こんな状況になることは普通の科学的知識があればわかるはずだ。発熱検査でどうにかなる問題ではなかろう。大本営発表で戦争に加担したメディアも、コロナ感染でも大本営発表を繰り返し、沖縄を苦しめている。

沖縄の窮状を救うためには、医師や看護師を派遣すべきだし、宿泊施設を国が支援して借り上げればいい。最新のAIやIoTを導入して、医療従事者の負担軽減を図ればいい。こんな時期に、知事が好きか嫌いかの基準で、嫌がらせをするような政治は政治とは呼べない。こんな時こそ、沖縄支援をするのが、終戦後に苦労をした沖縄県民に対する恩返しではないのか。

那覇、宮古、石垣空港に到着した人は、全員、唾液PCR検査を受ける。検査結果が出るまでは、きれいな海が見えるホテルに留まってもらい、陰性であれば観光に行っていただき、陽性であれば、隔離用のホテルや病院に移ってもらうことにすればいい。もちろん、その時点で陰性であっても、その後陽性になることもありうる。しかし、できることをしようとしない政治にはうんざりだ。感染拡大抑制と経済活性化と口で言うだけで、自粛という国民任せだけでいいのか。国は、具体的な案を提示すべきだ。

写真AC:編集部

今のままでは、沖縄の観光産業、飲食業は壊滅的になる。医療を支援する仕組みも重要だ。メディアも批判するだけでなく、どうすれば沖縄の窮状を救うことができるのか、少しは考えられないのか? 戦争中、終戦後とも大きな犠牲を強いられた沖縄の方々をみんなで支援しよう。

猛暑の中で、お盆だというのに、今週は会議の連続で少しへばっている。少し歩くだけで汗が噴き出してきた。でも、沖縄のために何かしたい。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年8月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。