我が家独自の緊急事態宣言 共働き夫婦のリモートワーク、ワーケーションの現実

妻の仕事が修羅場モードである。いや、緊急事態モードと言っていい。守秘義務があるので、詳細は聞いていないのだが、要するに月末まで仕事の関係で忙しくなるようだ。

3月以降、完全に在宅勤務になってから彼女の労働時間は1日3時間増えた。通勤時間の往復2時間+1時間分。昨日も遅くまで働いていた。月末まではこのペースである。

「リモートワークになってから、家族との時間が増えて最高ですー」「自分で仕事の量をコントロールできて、メリハリのある生活ですー」「QOLあがりましたー」的な、いかにも日経系媒体で喧伝される「働き方改革でWLB実現!QOLアップ!」的な光景では決してない。まあ、新居が最高に気持ちいいので、気分だけはリゾートなんだけど。

「家族と一緒にいる時間」と言うけれど、今までの家での妻と、仕事モードの妻は違い。いや、仕事部屋は完全に分けているのだけど、仕事でピリピリしたり、逆に集中力ありすぎてまったく話を聞いてくれないモードの、つまりビジネス人格の妻と一緒に暮らすということでもあるわけで、ね。

こういうとき、私の仕事時間が侵食されていく。いや3月からずっとそうだったのだけど。だから、本やかっちりめの寄稿もの原稿が進まなかったのだけど。まあ、時間限定勤務みたいなもんだけど、これからは仕事は朝~17時15分まで。それ以降は、娘が疲れるまで連れ歩く、と。

ワーケーションにでも出かけようと思ったが、約2.7万軒掲載されているじゃらんnetで、このキーワードで検索したらヒットした宿は180軒。まあ、そんなもん。もちろん、そううたっていなくても、向いている宿・プランはあるのだけど。誰もいない一軒家にいると気持ちが落ちると思うので、そばにいることにする。

ちなみに、ワーケーションは間違いなく、あらゆる点でプレミアムフライデーと同じ道を歩むだろう。経団連企業を中心に、一部の人が盛り上がっている風で終わり、と。「そんなもの、庶民に無理」という結果になりそう。いや、まだプレミアムフライデーの方がちゃんと試行錯誤して、知名度自体は高まっておりナイス。なお、「ガイアの夜明け」にワーケーションにぴったりという触れ込みで出てきた宿に、ワーケーションプランはなく。さらに、2泊3日すると1人5万円という、まあ、庶民には無理っしょ、普通のときなら沖縄にパック旅行でいけるっしょ、という値段だったことを共有しておく。

この手の話を、できる人前提、聖人君子前提、改革企業前提(まあ、業績はどうなのとか、本当にステークホルダーに評価されているのとか、メディア受けするだけだよねとか、色々言いたいことはあるし、こういう企業が掲載されるたびにタレコミはいっぱい)で語るのは、かえって改革の方向性を歪めないかといつも心配になったりする。

いかに働きすぎにブレーキをかけるか、一方でそのために自由で柔軟な働き方が必要だ、結局いつでもどこでも誰とでも働くのだという世界観のせめぎあいが続く。

というわけで、個人としてはこの夏休みこそ原稿を仕上げるので、集中することと、娘と一緒の時間は楽しみ尽くすことを大事にしたい。もうやるしかないんだよ。

我が家の独自の緊急事態宣言と、半径5メートル以内のリモートワーク、ワーケーションのレポート。サンプル数1。


編集部より:この記事は千葉商科大学准教授、常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2020年8月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。