熊本県人吉市、Yahoo! JAPAN、RCFが連携し、人吉・球磨地域の復興支援

9月1日は防災の日でした。97年前に起きた関東大震災に由来し、行政と民間が災害について準備する日となります。この日に間に合う形でRCFは昨日、7月豪雨で甚大な被害を受け、いまだに復旧途上である人吉市への、ヤフー社と連携した支援を発表しました。

『熊本県人吉市、Yahoo! JAPAN、一般社団法人RCFが連携し、令和2年7月豪雨からの復興支援を目的に募金窓口を開設』

被害の状況と、ヤフーさんといかなる支援を行うか、そして今後の見通しを説明します。

1.人吉の被害と、ボランティアの課題

7月3日夜から4日夜にかけて熊本県を流れる球磨川流域で13箇所が決壊。5市町村が被害をうけ、なかでも人吉市は1.5万世帯のうち5千世帯が浸水被害をうけるなど甚大な被害を受けました。浸水の高さは4メートル以上となり、少なくない家屋が一階天井まで浸水。人的被害は人吉市だけで20人で全国では死者82名行方不明4名。住宅被害は人吉だけで4,681棟、全国では1.8万強となりました。

東日本大震災でいえば石巻市での被害に似た状況だと言えます。ただ、新型コロナウイルスの影響で支援がまるで異なります。水で浸かった家から泥出しをするのはボランティアが必須です。しかしコロナにより熊本県外から支援ができないのはもちろん、感染が相次いだ熊本市からも支援が遠慮された時もありました。

東日本大震災では一年間はくりかえし全国メディアで厳しい実情が報じられました。しかし、今回は在京メディアも人吉に入ることが遠慮され、結果的に発災後1週間程度で、熊本の外では報じられなくなりました。このような状況になると、被災者は悪い意味で「大変なのはお互いさま」になり、本当はボランティアに来てほしいのだけれど、ボランティアセンターに頼まなくなります。結果的に、支援がまだまだ必要にも関わらず、「ある程度ニーズは満たせた」ということで、地元社協は災害ボラセンを閉じてしまうのです。

2.復興政策の課題

また復興も課題です。そもそも、東日本大震災以降、復興のあり方は大きく変わっています。阪神大震災や中越地震など、以前は「復興基金」という10年間活用できる財源を用意し、長期的な目線で、しかも行政とは独立した形で復興は進められました。東日本大震災は規模が大きすぎたため、復興庁が新たに設置され、国が主導する形で復興が進められました。結果、予算は単年度型となり、何より被災自治体が国との調整を余儀なくされました。

それでも東北は予算が潤沢だったから良かったものの、その後の災害復興に影を落とします。復興基金は活用されず、予算は東北よりも減り、しかし行政主導型は変わらない復興となりました。結果的に、メディアが注目する災害復旧段階では予算が多くつきますが(インフラ復旧やグループ補助金など)、その後の被災者や事業再建といった、災害から1年後以降の復興プロセスでは、一部支え合いセンターなどをのぞけば、被災自治体がほぼ自力で進めざるを得ない状況に陥っているのです。

3.民間からの取り組み

RCFは、全国の災害からの復興に関わる数少ない団体の一つです。様々な制度や民間支援を組み合わせながら、復興支援にあたります。

例えば2018年に発生した西日本豪雨災害の被災地宇和島市では、2年にわたり支援を続けています。まず私が宇和島市の復興アドバイザーとなり、総務省の制度を用いて毎月訪問しました。また地域おこし企業人制度を活用し、パートナーであるウィンウィン社から毎年1人ずつ現地コーディネーターを派遣頂きました。そしてヤフー社と連携して被災したみかん農家を支援、またフィリップモリスジャパン社からは2,000万円の支援を頂き、この財源を活用して、うわじまNPOセンターの設立・運営、また新規就農者支援の枠組みを作りました。

RCFはノウハウとネットワークがあるので体系的に復興支援を進められます。しかし多くの被災自治体はノウハウがありません。復興庁にはノウハウがある程度ありますが、東北以外の復興に関わる事ができません。

今後も大規模災害が予想される中で、防災や復旧支援に加えて、復興過程でいかに支援を進めていくかは日本社会全体の残された課題です。

4.人吉・球磨地域への復興支援で何をするか

さて人吉です。今年から、クラウドワークス吉田社長が設立したPEAD(緊急時災害支援プラットフォーム)に私も理事として参画し、災害直後の支援をご一緒することとなりました。実際、人吉にも発災後二週間で現地入りし、神社再建とラフティング事業再建に対して200万円の支援を即日決めるとともに、500万円のクラウドファンディングも成功させています。

続くは復興支援です。こちらでは、1-2年かかる復興に向けて、被災者の生活再建や事業者の再建支援を行う必要があります。第一弾として、ヤフーさんと連携し、募金の窓口を設置しました。昨日から開始しましたが、ありがたいことに12時時点で40万円を超えました。(Tポイントでも寄付可能ですので、せびご検討下さい)

こちらは人吉市と連携し、人吉市と協議しながら使途を決めることになりますが、市役所に直接寄付しないでRCFが受け皿になるのがポイントです。行政の資金となると公平平等が必要になるため、スピーディで効果的な支援がなかなかできないのです。この方式により、現地のニーズを把握しながらも、効果的で迅速な支援を実現できます。

さらに今後、大手企業による大型の支援が予定されています。RCFとしてもまだ決まっていませんが現地コーディネイターを設置し、長く続く復興へのニーズを見極めつつ、支援方針を固めていきます。

5.復興政策をアップデートする

人吉でもこれから続く復興プロセスをご一緒することになりますが、2018年西日本豪雨、2019年の台風災害の被災地での支援も継続しています。2011年の東日本大震災からの復興も、福島沿岸を中心にまだまだ終わってはいません。

そしてコロナ禍でも自然災害はおき続けます。個々の地域の支援を行いながらも、復興政策をいかにアップデートするか、関係者と連携しながら、役割を果たしていきたいと思います。

(ちなみに、この意味でも自民党の総裁選を注目していますし、防災・復興政策についても政策論議が行われることを期待します)


編集部より:この記事は、一般社団法人RCF 代表理事、藤沢烈氏の公式note 2020年9月1日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は藤沢氏のnoteをご覧ください。