明治神宮は2020年、創建100年を迎えます。70万平方メートルにおよぶ鎮守の森は、都会のオアシスとして日本国民はもちろんのこと、外国人旅行者にも親しまれています。この杜の敷地は皇室所有地でしたが、ほとんどが荒れ地だった言われます。その荒れ地が、全国からの10万本の献木を植栽し、全国青年団の勤労奉仕によって、杜になったのです。あれだけ広いと元々自然林だったと思っている人も多いと思いますが、人工林なのです。
多くの国民が協力して作り上げた人工林は、今や自然林として存在し、手をかけることなく悠然と立ち尽くしているのです。この神宮の杜に現代アートが設置されているのだから、それだけでも不思議な気持ちです。
明治天皇は、江戸時代から明治時代へと正に大変革の時代に、欧米の知恵や文化を取り入れ、近代日本をつくられた方です。旧憲法の下で、今では想像がつかないほどの変革を成し遂げる為に大変なご苦労をなされたと思います。だからこそ、現代アートという次の時代を見据える作品が、100年の杜に設置される事は、大きな意味があると思います。明治天皇を御祭神とする明治神宮だからこそ、変革の象徴として、現代アートと神宮の杜のコラボが実現できたものと思います。
神宮の杜には「天空海闊(てんくうかいかつ)」という野外彫刻展が開催されていて、名和晃平、松山智一、三沢厚彦、船井美佐、4名の作家の作品が設置されていいます。全国青年団の勤労奉仕、10万本の献木、明治天皇の変革意識、という歴史を知ることによって、100年の杜にたたずむ現代アート作品が、次の時代の象徴のように見えてくるのです。もちろん、歴史を知らなくても、この杜の奥深さと作品のコラボに何かを感じる人は多いと思います。
明治神宮ミュージアムでは「紫幹翠葉(しかんすいよう)~百年の杜アート」が開催されています。30名のアーティストがこれまでの作品とは異なる思考で作り上げた新作が展示されています。杜を背景にした作品展示という工夫、同じ扇面に作家30名が、それぞれの作品を記した展示には迫力があります。神宮の杜にあるミュージアムで、これらの作品を見ることが出来るのは楽しいという言葉に尽きます。2021年3月まで、様々な展示やイベントが行われる予定だと聞きました。
コロナによって、外国人旅行者が日本に来れなくなっている。本当であれば、神宮の杜で、日本の現代アート作家の作品を見てもらいと思うのです。そして、明治天皇が開国後の日本の変革に如何に尽力をしたのかをアートと共に感じてもらえればと思うのです。
僕たち日本人もコロナウイルス禍において、新たな時代をつくらねばなりません。明治神宮で現代アートの作品を見ながら、明治天皇の社会変革への思い、現代アーティストの次世代を見通す目を感じながら、次なる日本を考えるきっかけにすべきだと思います。是非、一度、見に行くことをお勧めします。
編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2020年9月8日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。