福島第一原発の「処理水」敷地内保管のタイムリミットが迫る中、アゴラ研究所は9月8日、衆議院議員会館第1(東京・永田町)で、シンポジウム「福島処理水 “ゼロリスク” とどう戦うか?」を開催した。
池田信夫・アゴラ研究所長の司会のもと、ジャーナリストの田原総一朗氏、細野豪志衆議院議員(無所属、自民党二階派客員会員)、柳ヶ瀬裕文参議院議員(日本維新の会)、福島在住のNPO法人ハッピーロードネット理事長、西本由美子氏が、処理水問題を停滞させてきた政治とメディアの責任、打開に向けた地元の思いなどについて活発な議論を交わした。
シンポジウム本編に先立ち、アゴラ編集部が原発立地町である大熊町と双葉町の両町長に事前取材してのコメントを紹介した。大熊町の吉田淳町長は「このままタンクが残り続けては、町の復興を停滞させるのではないかと危惧している」と危機感をにじませ、現在も町民が帰還できていない双葉町の伊澤史朗町長は、「全町避難を継続している町があることをお忘れではないか。問題が解決するために報道の責任がある」と訴えた。
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民主党政権時代に原発事故担当相を務めた細野氏は、
「もはや決断は先延ばしにできない。2022年夏には敷地内のタンクがいっぱいになる。二次処理、モニタリング制度の確立、補償問題も含めて、決断してから放出までに2年かかる。今がまさにタイムリミットである。現状放置はできない。何をどのように補償するかの議論に入っていくべきで、最後は政治の決断だ」
と瀬戸際の状況を訴えた。
日本維新の会で処理水問題のタスクフォース事務局長を務めた柳ヶ瀬氏はパネルを示しながら、
「海洋放出しかないのは誰もが分かっていること。今でも”汚染水”というミスリードの言葉が使われる。世界各国の原発から処理水が何十年にわたって大量に放出されているが、健康被害は報告されていない。我が国でも原発を運用してきたが、トリチウム水排出の実績がある。なぜ福島のトリチウム水だけがとりたてて問題にされなければいけないのか」
と科学的な知見に基づいた対応をあらためて強調した。
福島で活動を続けている西本氏は、
「住民代表として申し上げると、風評被害が最大のテーマ。絶対避けて通れないこのテーマに政治家とマスコミが向き合わずに10年が経とうとしている。マスコミは福島は危ない、怖いというイメージを発信したがるが、この問題は福島だけの問題じゃない。全国みんなで考えなくてはいけない」
とメディアの責任を指摘。
長年、原子力問題を取材してきた田原氏は、
「風評被害は残る。それは政府と東電が全責任を持って補償する。安倍首相が原発問題で一番頼りにしていたのはフランスで、そのフランスはトリチウムを流している。なんで自民党の責任者がトリチウム処理水は安全だと言わないんだ」
と政権与党の無責任を厳しく指摘した。
質疑応答では、「海洋放出を行う場合、漁業への影響はどう考えるか」「若い人が希望を持てるような補償制度を整える必要があるのではないか」といった質問や意見が出された。