バイデン・ハリス組の「中国人脈」

長谷川 良

米大統領選はいよいよ終盤選に突入してきた。ドナルド・トランプ大統領(74)とマイク・ペンス副大統領(61)の現職組に、ジョー・バイデン前副大統領(77)とカマラ・ハリス上院議員(55)組の戦いだ。

複数の世論調査によると、米共和党の現職トランプ・ペンス組は苦戦し、民主党の挑戦者バイデン・ハリス組が依然、先行している。ただし、ここにきて候補者とその親族周辺の不祥事や不透明な経済活動が争点として浮かび上がってきた。ここではバイデン氏とハリス氏が「説明責任」が求めらる機会が増えてきた。特に、親族関係者の「中国人脈」問題だ。

▲トランプ米大統領(ホワイトハウス公式サイト)

▲トランプ米大統領(ホワイトハウス公式サイト)

▲バイデン民主党大統領候補(バイデン氏のHPから)

▲バイデン民主党大統領候補(バイデン氏のHPから)

トランプ大統領の過去の不祥事はこれまでもリベラルな米メディアによって報道されてきたが、民主党候補者の不透明な経済活動については余り報道されていない。そこで米右派系隔週情報誌「New America」が今月7日、報じたハリス上院議員の夫とバイデン氏の次男の「中国人脈」について紹介したい。

先ず、ハリス上院議員の夫、ダグラス・エムホフ氏(55)は中国共産党関係者が経営する会社に顧客サービスを提供する法律事務所 DLA Piper社(ディ・エルエイ・パイパー)に2017年以来、勤務する弁護士だ。同情報誌は「ハリス女史の夫、中国のために働き、巨額の富を」いう見出しで、ハリス氏の夫が勤務する会社 DLA Piper社を紹介している。

同社は中国との取引に従事し、会社の中国投資サービス部門には140人の専属弁護士がいる。エムホフ氏はそこで知的財産権などについて相談役として働いてきた。同会社にとって中国は最大の顧客であり、そこから巨額の利益を得ている。

DLA Piperの公式サイトをみると、「世界中の企業のリーガルニーズに応えるべく、南北アメリカ、ヨーロッパ、中東、アフリカ及びアジア太平洋の40カ国以上に弁護士を擁する国際法律事務所」と紹介し、「ビジネスがグローバル化する中、世界に展開する企業が直面する多種多様で複雑な問題を解決する、付加価値の高いリーガルサービスを提供している」というのだ。

同社はまた、ビジネス・コンサルタントを職務とする「コーエン・グループ」と戦略的同盟を結んでいる。クリントン政権時代に国防長官を務め、バイデン氏支持者のウイリアム・コーエン氏が率いるロビイスト会社だ。コーエン氏自身は頻繁に中国を訪問し、共産党幹部たちと会い、中国の資本を米国に流し、米国内のさまざまな知的財産の購入を手助けしている。同会社は中国関連顧問を支援する中国デスクを米国と欧州に持っている。問題は、バイデン・ハリス組が11月の大統領選で勝利した場合、エムホフ氏の会社が中国の利益の為に利用される危険性があることだ。

バイデン氏が健康問題で職務を履行できないといった状況になれば、ハリス氏が大統領職に就く可能性が出てくる。その結果、中国共産党はハリス氏の夫を通じて、ホワイトハウスを完全にその影響圏に入れることができる。トランプ大統領からバッシングされている中国だが、大統領選の結果次第では、中国は米国と黄金の時代を迎えることになるわけだ。

次は、バイデン氏の場合だ。29歳で上院議員に初当選した直後、妻と娘を交通事故で失い、自分の後継者と期待していた長男(ジョセフ・ロビネット・ボー・バイデン)が2015年、脳腫瘍で亡くなるなど、家庭的には不幸が続いた。

バイデン氏に関してはこのコラム欄でも少し紹介したが、米ペンシルベニア大学傘下の外交公共関係の団体「ペン・バイデン・センター」が、中国からの数千万ドルの寄付金を公開しなかったため、倫理団体が米国教育省に調査を求めたという情報が流れている。バイデン・センターは、バイデン氏が創設した公共政策提言組織だ。

問題はバイデン氏の次男、ハンター・バイデン氏(50)の経済活動だ。ハンター氏は2013年12月、父バイデン副大統領(当時)が中国を公式訪問した際に同行した。その後、ハンター氏らが設立した「ローズモント・セネカ・パートナーズ」に中国の銀行から10億ドルの出資金が振り込まれ、後に15億ドルに増額されたという情報が流れている(米著作家ペーター・シュバイツァ―氏)。

「New American」は「ハンター氏は中国の石炭で金持ちとなった。そして中国の米国での戦略的資産取得を助けてきた」という。ハンター氏が務めていた投資ファンドは、機関投資家や個人投資家から資金を集め、それを基に事業会社や金融機関の未公開株を取得し、その企業価値を高めた後に売却することで高収益を上げることを目的としている。

ハンター氏の場合、中国との関係が明らかになる前、ウクライナの天然ガス会社から月5万ドルの報酬を得ていたが、その詳細な活動については不明だ。トランプ大統領がハンター氏のウクライナでの経済活動について、ウクライナのゼレンスキー大統領に調査を依頼したことが明らかとなり、メディアで報道されことから、ハンター氏のウクライナでの経済活動が知られるようになった経緯がある。

いずれにしても、エムホフ氏の場合、ハリス氏が副大統領候補者に選出されたこともあって、DPA piper社を休職する一方、ハンター氏は、「バイデン氏が大統領に選出された場合、外資系企業との関わりを断つ」と表明するなど、中国色を薄めるのに躍起で、トランプ陣営から「中国人脈」を追及される前に手を打っている。

米国有権者は大統領選では新型コロナの感染対策と国民経済の回復が最大の関心事だろうが、11月3日の大統領選は世界の覇権を狙う中国共産党の行方を占うという意味で、世界史的なイベントだ。中国の不法な経済活動や人権蹂躙を繰返す中国共産党政権に戦いを挑むトランプ政権と、親族関係者に中国共産党と太い人脈をもつバイデン・ハリス組との戦いだ。その結果は、単に米国だけではなく、世界に大きな影響を与えることは必至だ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2020年9月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。