菅氏「反対する官僚は異動」の深層

千正 康裕

2014年5月、内閣人事局創設時の看板掛けに立ち会う菅氏ら(官邸サイト=編集部)

1.  報道(配信された記事)

菅氏、内閣人事局は変えず「政策反対なら異動」
という記事が配信されました。

自民党総裁選に立候補した菅義偉官房長官は13日のフジテレビ番組で、中央省庁の幹部人事を決める内閣人事局に見直すべき点はないと明言した。政権の決めた政策の方向性に反対する幹部は「異動してもらう」とも強調した。石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長と出演したフジテレビ番組で発言した。

記事(共同通信)はこちら

2. 元ネタのテレビ番組

フジテレビの「日曜報道」で、橋下さんがした総裁選候補の3人への質問の回答が元ネタのようです。

番組の動画がYouTubeにあるので見てみました。
※ オフィシャルではない動画のようだったのでリンクつけませんが、検索してみてください。

【番組での実際のやりとり】

(1)官僚の人事異動

橋下さんの質問

政策を決定した後に反対をした官僚を異動させるか?

菅さん

私ども選挙で選ばれていますから、そういう中で、何をやるという方向を決定したのに反対するのであれば異動させる。

岸田さん

まずは説得する努力をしなければならない。しかしながら、決めたことは貫かなければいけないので、必要であれば異動させる、それはあると思う。

石破さん

それは異動させることはある。ただ、これが組織を委縮させるものであってはいかん。
あの人はあそこに異動したんだね、そういうことなんだねと。
でも、その人が反対したことも自分の信念に基づくものであれば、その後不利な取扱いをしちゃいかん。そうすると組織全体が委縮してしまう。

(2)内閣人事局について

橋下さんの質問

内閣人事局制度について修正すべきところはあるか?

菅さん

(修正する箇所は)ないと思う。私ども一強だとか言われるが、まず、(幹部人事の)原案は大臣に書いてもらう。大臣は自分の省庁のことをしっかり見ている。大臣に対して疑問があれば、私も言うが、そこは、最終的に大臣が了解しなければ動かすようなことはしない。だけど、私たち政治の仕事は国家運営なのでその方針には従ってもらうということだ。

岸田さん

対象はもう少し絞ってもよいと思う。
また、国民あるいは周りから見て、圧力とか忖度なんていう言葉が取りざたされている。
やはり、ルールあるいはプロセスのより透明性を図って、ありようを示していく努力が必要。

石破さん

600人が対象だが、600人の管理はまずできない。会ったことがない人を評価するのは難しい。600人はかなり規模が大きい。適正規模は300人。
なぜ、この人はこうなのかということが、みんなに理解されることが大事。

3.政治的意思決定と官僚の人事

官僚は組織人です。組織として決定したことに反対しては、仕事が進まなくなってしまいます。これは、民間企業でも同じでしょう。

また、民主主義という観点でも、最終的には選挙で選ばれた政治家のトップが決めて、それについて政治的な責任を負うことは当然のことでしょう。

決定した後に反対するのは、官僚の在り方としてもおかしいですし、多くの官僚もそれはいけないことだと思っているはずです。

問題は、決定に至る過程で部下である官僚の意見もよく聞いて決める、
そして、最後は責任を持って政治が決める、決めたら一丸となって政策の実現・実施に取り組むということと思います。

政治家でも官僚でも、その人がどんなに優秀でも、すべてのことを見通すことは不可能なので、異論を含めた様々な意見を聞いた上で決めた方がよい決定ができるからです。

また、人事については、基本的なことですが、どういう理由でしたかということを説明することが大事だろうと思います。これは、どの組織の人事でも同じでしょう。官僚幹部の人事は政治的な権力行使の話なので、本人だけでなく国民にも説明できるものであればよいと思います。特に異例の人事を行う場合はしっかりと説明することが望ましいと思います。

あと、個人的には内閣人事局による幹部人事の一元化という仕組み自体が取りざたされることが多いのですが、僕はそのこと自体はおかしくないと思います。大切なことは権力の行使の在り方の方で、一つひとつ説明ができる、国民が聞いて納得できるかどうかということと思います。

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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2020年9月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。