安倍総理が持病の悪化を理由に退任を表明されました。8年近くの長期政権にあって、私自身も約4年間、文科省で、下村、馳、松野、林の各大臣の下、大臣補佐官として数々の改革に携わる機会を得ました。
二度目の安倍政権は、教育面でも大学改革、英語教育改革、教育委員会制度見直しをはじめ、歴代の政権と比べても多岐に渡る施策を実行しました。教育再生実行会議を官邸に置きそれらの施策をもたらし、官邸主導によるトップダウンの意思決定が非常に強かったことも特徴に挙げられます。
安倍政権は、幼児教育の無償化、私立高校の無償化、低所得者世帯向けの大学無償化という一大業績を残しましたが、毎年2~3兆円規模もの予算確保が必要な、これらの施策を実現できたのも、官邸の強い力があって財務省を動かすことができたからです。
霞が関では文部省の時代から大蔵省のほうが伝統的に力関係で強く、教育予算を確保しようとしても、年々悪化する財政難と高齢化という二つの壁を前に苦戦を強いられてきました。安倍政権の官邸主導スタイルには色々な評価はありましょうが、総理個人の教育改革への強い思いと、それを具現化するガバナンスの仕組み作りが数々の壁を打破したことは確かです。
残念ながら道半ばに終わった取り組みもありますが、安倍政権が終わってしまうと、教育への公的投資がこの8年間のように継続できるかといえば難しいと言わざるを得ません。
振り返ればこの長期政権は好調な経済に支えられました。政権初期のアベノミクス政策で持ちなおした景気は、戦後最長クラスの6年間も持続し、税収はバブル期並みの63兆円にまで伸びました。経済基盤が安定しないと投資への意欲はわかないものです。
しかし、その景気がしぼみはじめた矢先、コロナ禍に見舞われました。4~6月期のGDPは3四半期連続のマイナス、年率換算で戦後最悪の27.8%の落ち込みとなりました。飲食、観光を筆頭に多くの産業が大打撃を受け、景気の急激な悪化による税収減は必至です。加えて過去にない規模での財政出動をすでに強いられている中、投資への余力が削られています。次期政権からの教育予算編成は年々厳しくなります。
教育への公的投資が行き詰まりを見せる中、次世代を育てるための財源はどう確保すればいいのでしょうか。来月のコラムは“ポスト安倍”時代の教育投資のあり方について展望します。