人材派遣大手のパソナグループが、東京にある本社機能を兵庫県淡路島に移転することを明らかにしました。どれ程の規模かというと、グループ企業を含め約4600人のうち、幹部全員と経営企画や人事情報技術システム部門などの1800人が対象ということです。このうち3割が東京に残り、残りの1200人ほどが淡路島勤務になるということです。
その背景に何があるのかというと、やはり新型コロナウイルスですね。新型コロナウイルスの感染拡大によって、企業のテレワークは格段に進みました。パソナも約4割の社員がテレワークで勤務しているそうです。富士通もオフィスの半分をなくすと、8月25日に「オフィスの次は住宅か?」でお伝えしました。社員が自宅で仕事をする、地方で仕事をするというのはわかりますけれども、今回はそれとは違い会社が地方に移転をするということですね。
この点についてパソナグループの南部靖之代表は、インタビューで三つの考えを示しています。
一つ目は、自社を含めて、「東京一極集中のリスク」。天災もそうですし、今回の新型コロナウイルスの感染拡大も都市に会社が集中している、そこに自分自身もいるということ自体がリスクです。そうしたことのリスクヘッジということです。
二つ目は「コスト論」です。淡路島は東京に比べて、本社の家賃を10分の1に抑えられるということだそうですけれども、当然ですが通勤手当や住宅手当も抑えることが可能ということになるでしょう。
三つ目は「生活の豊かさ」ということですね。地方であれば職住近接が実現でき、通勤ラッシュからも解放されることでもありますし、自然も豊かで心もヘルシーになるということです。
いずれの三点にも私は同意します。とにかく日本の上場企業の半分以上が東京にあるということで、なんでもかんでも東京に集中していることにそもそも疑問を持っており、私地方に行くとつくづく、「仕事されあれば、こっちに住みたい」と思います。その方が豊かな人生だと思えるんです。自然が近くにあり空気も美味しく、当然食べ物もおいしい。日常だけではなく、週末で仕事が休みの日なども自然に触れる機会が当然増えますし、映画とか音楽は今や、オンラインでも十分楽しめます。ですから、これはどうしてもという場合だけ、たまに都会に出てくるとのでいいんじゃないかなと思えます。
そう望んでるいる人は世の中かなりいると思いますが、今回のように何千人という会社が移動となると、これある種のリストラかという批判もあるようです。とはいえ、会社そのものが移転するから私も行けるという人も確かにいると思いますよね。単独で1人だけが移住するのはなかなか難しいですね。
パソナの南部代表は、自ら会社を創業して新規事業を開拓してきた人です。そういう意味では今回の淡路島移転については、コロナを受けての精神性とスピード決断が南部代表らしいなと思います。
一方で、それをまた逆に捉える人もいます。淡路島は地域活性化総合特区指定を受けているから、補助金や税制上の優遇がある。そこで、南部さんらしい合理的な判断で、状況が変わったらさっさと淡路島を捨てるのではなかろうかという声です。
私が横浜市長時代に制定された企業立地促進条例(横浜市企業立地等促進特定地域等における支援措置に関する条例)の時も同じような議論がありました。結果として、日産自動車が銀座から横浜に本社機能を移転したんですけれども、条例では補助金や税の減免などがありましたから、それらを食い逃げしてさっさと横浜から出て行く時が来ると市議会でも意見が出ました。
しかし、「多額のお金を費やして大人数で引っ越してきたのに、さっさといなくなるなんてことはない」と私は答えていました。今後の日本を考えれば懸念があるなどと否定するのではなく、地域に根付くように、会社側も地域も努力が必要ですし、また、働き方改革など社会環境も進化させていくという政府にも責任があると思います。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年9月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。