冒頭
ご来賓、友好団体の皆様、ご多忙の中、国民民主党の設立大会にご参集いただき、またインターネット中継からも沢山の方にご参加いただき、誠にありがとうございます。ビデオやメッセージを送っていただいた皆さまにも、心から感謝申し上げます。
そして、決死の覚悟で、ここに集った15人の衆参両議員、苦しくともここを選んでくれた公認内定者7人、全国の自治体議員の同志の皆さん、そして4人の残ってくれた職員の皆さん、私は皆さんと一緒に、国民の期待に応える、いや、期待を超える政党をともに作り上げていくことを、まずお誓い申し上げます。
私は、新型コロナの感染拡大がなければ今日の新・国民民主党の結党はなかったと思っています。コロナ禍によって苦しむ声、さまざまな理不尽や不条理の声を聞いてきました。そして、課題を解決するため、一律10万円給付や家賃支援などを他に先駆けて提案し実現につなげましたが、そんな中で、国民の役に立つ「具体的な政策提案を絞り出すこと」こそ、与野党を問わず、今の政治に求められる役割ではないかと思うようになりました。
だからこそ、私は国民民主党が結党以来掲げ続けてきた「政策提案型の改革中道」の立ち位置を守り抜き、さらに進化させていかなくてはならないとの確信に至りました。そして、今日、ここに集った仲間に、この思いは共有されているのではないでしょうか。野党であっても、「何かをしない」ではなく「何かをするために」力を注がなければ、国民の共感は得られない。今改めて、国民のための政治を実現するとの思いを胸に刻み、私たちは皆さんと一緒に新たなスタートを切りたいと思います。
そして、私たち国民民主党は、以下の「3つの方針」で、国民のお役に立つ政治を実現していきます。
3つの方針
★まず1つ目の方針は、今お話しした「現実的な政策提案型の政党」であるということです。私たちが重視するのは、違う立場との「対決」ではなく、違う立場をも巻き込んだ「解決」です。国民に平和で豊かな生活を届けたいという共通目標があれば、違う立場であっても基本的な敬意を払う。その上で、私たちは「新しい答え」、つまり、建設的で現実的な政策を提示し、前向きな議論を自らリードし、最適解を見出していきます。
★2つ目は、「国民と一緒に開かれた政策シンクタンクをつくり、イノベーションを起こす政党」ということです。 コロナ禍の台湾、わずか3日でマスク供給システムを開発実施した台湾の唐鳳(オードリー・タン)デジタル担当大臣はこう言っています。
「自分の意見が政策に反映できる、と多くの市民が実感できれば、民間発のアイディアは尽きることなく湧いてくる。市民が政治に興味を持ってくれたら、それはイノベーションの種を未来へまいたことになる。すべての人が自分の意見や知識を惜しみなくシェアし、誠実に話し合いのできるプラットフォームを作ることが重要だ。」
10年先の未来を検索することはできません。調べられないものをみつける唯一の方法は、固定観念や既得権を取り払い、たくさんの声に耳を傾けること。政治家であっても、いや、政治家だからこそ、知らず知らずに身に着けてしまったしがらみから自分を解き放ち、素直にのびやかに多くの知見を吸収する姿勢を持つことが必要です。むしろ、国民と政治家が、一緒になって社会の制度設計を創り上げ実現していく、国民民主党は、そんな新しいプラットフォームを作っていきます。
私たち国民民主党のカウンターパートは、与党でも野党でもなく、国民です。国会議員、自治体議員、党員・サポーター、そして何より広く国民との開かれたネットワークの中で、デジタル空間も活用しながら、アイディアを共有し、議論し、政策を磨いていきます。そのための「国民に開かれた政策シンクタンク」を立ち上げ、「若いベンチャー政党」として、政策立案プロセスに新しい風を巻き起こしていきます。
★3つ目は、「事実とデータに基づいた現実的で正直な未来志向の政党」であるということです。
価値観がこれだけ変化し多様化した現在、イデオロギーから政策選択を導く時代は終わりました。少子高齢社会をどう生きるか、コロナの感染を抑えながら経済や文化を維持するための方策はなにか、米中対立が深まり緊張を増す国際情勢の中で安全保障環境をどうコントロールしていくのか。こうした深刻な課題に対し、リベラル対保守というような単純なイデオロギー対立で見るのではなく、データと事実に基づいた、現実的で正直な未来志向の提案をします。小粒でもピリッと辛い頼れるプロフェッショナルな政策集団となることを、国民の皆様にお約束します。
「3つの尊厳」
このように、「提案型」で「開放的」で「現実的で正直な未来志向」という我が党の「3つの方針」により、私たちは「3つの尊厳」を守りたい考えています。
それは「個人の尊厳」、「地方の尊厳」、そして「国家の尊厳」です。
すなわち、自らに誇りが持てる、暮らす地域に誇りが持てる、そして日本という国家に誇りが持てる。そういう社会を実現するための政策を掲げていきます。
★まず「国家の尊厳」を守るために
戦後進められてきたグローバリズムは、世界を豊かにした側面はある一方、現代のわが国においては、食糧安全保障、エネルギー安全保障、経済安全保障の観点における脆弱性をもたらしています。行き過ぎたグローバル資本主義、特に金融グローバリズムによって生み出された国家の脆弱性や社会の格差を是正していく国家戦略が求められています。すなわち、世界に委ねる部分と国内で対応できる部分を区別し、後者においては「戦略的に閉じる」政策を打ち出します。産業の国内回帰の促進や、外国の買収防止策などがその一例です。
また、いわゆる国家安全保障の観点からは、緊張を増す安全保障環境の中で現実的な対応を示していきます。日本が希求し守り抜くべき「平和主義」の中身や、自衛隊が行使する自衛権の範囲についての合意を追求するとともに、まさに「国家の尊厳」「国家の自律」の観点から日米地位協定の改定に向け本格的な取組みを進めます。
こうした戦後の課題への取組みとあわせて、尖閣諸島への海洋進出が進む中、グレーゾーンへの対応、ドローンや無人機による攻撃、サイバー攻撃、宇宙空間における防衛体制など、現代的な課題にもしっかり対応し、必要な法整備・見直しを提案していきます。
あわせて大切なのは、自由と民主主義と法の支配という普遍的価値は譲れないということです。国際社会に目を向ければ、市民社会の自由への弾圧が見過ごせないレベルにまで高まっている国や地域があります。あるいは世界的に懸念される「民主主義の後退」そして「法の支配の危機」。だからこそ、私たちは、「自由・民主・法の支配」という普遍的な価値への確信を深めて、国内のみならず国際的にも毅然とした対応を貫いていきます。違う立場に敬意を払い、自らの変革を恐れない政党だからこそ、普遍的価値への確信という本質を大切にすることを約束します。
★次に「地方の尊厳」を守るために
私は、コロナ禍をきっかけに、真剣に国と地方の役割分担を見直すべきだと実感しました。現場を知らない国側が、ずれたタイミングで的外れなコロナ対策を繰り出す中、今もなお、現場を抱える首長さんたちが、それぞれの地域の実情にあったやり方を模索しながら必死にふんばってます。権限も不安定なら、財源はもっと不安定な中で、最前線の責任を果たそうとしてます。だからこそ、地方への財源・権限の拡大を実現していきたいと思っています。
また、地方の声を政策形成プロセスにきちんと反映できることがとても重要で、参議院選挙区の合区の解消についても、憲法改正も含め積極的な議論をしていきます。
★最後に「個人の尊厳」を守るために
金融グローバリズムとデータグローバリズムの拡大により、特定の巨大グローバルネット企業が世界市場を根こそぎ独占し、競合企業の排除、利益独占、そして租税回避が当たり前の現象になっています。この現象は、国の産業構造や国家財政を脅かすだけでなく、社会の分断と所得の格差を生み、固定化させています。
今こそ、一人ひとりの個人が自らに誇りを持ち、互いに敬意を払うことのできる社会を作り直さなければなりません。
そのためにもまずは教育です。「人づくり」なくして「国づくり」なし。国民民主党は「教育や科学技術への投資」を倍増することを提案します。
あわせて、極端に偏った富の集中を改め、広くあまねく富が分配されるよう、「家計」を豊かにし、「消費を軸とした好循環」を回していく「家計第一」の経済政策を進めていきます。
私たちが提唱し実現したコロナ禍における一律10万円の給付策は、図らずもベーシックインカム的な性質を先取りすることとなりました。他の社会保障制度や減税政策を整理したうえで、給付と税還付を組み合わせた「給付付き税額控除」や、医療や教育といった基礎的な行政サービス、すなわち「ベーシックサービス」の無償または安価な提供により、尊厳ある生活保障を実現する、そのことによって、1人ひとりが自らに誇りをもち、互いに敬意を払いあう、そんな社会を目指します。
国民民主党シン・憲法改正草案
こうした「三つの尊厳」すなわち「個人の尊厳・地方の尊厳・国家の尊厳」を大切にする国家像を、私たちは憲法議論を通じて社会に投げかけていきます。憲法は国家像を示す大切な規範です。
たとえば、データグローバリズムから個人の尊厳を守り、人間中心のAI社会を実現していくための「データ基本権」の創設、地方への権限移譲・財源移譲を保障していくための「地方自治の本旨」の具体化、国家の統治の歪みを是正し三権分立をリバランスするための解散権の制約や国民投票制度の導入、食料安全保障やエネルギー安全保障の明記、専守防衛を貫徹しつつ現実的な国家の守りを可能にするための憲法9条の規範性の回復、そして、憲法全体の規範性を回復させるための「憲法裁判所の創設」。こうしたテーマを積極的に議論していきます。
私たちは、憲法審査会の審議を拒否することはしません。国会での議論を丁寧に積極的に牽引・リードしていきます。あわせて、憲法議論の主役は何より国民です。国会の外での国民との対話、オンラインとオフラインの両方で進めていきます。こうした議論・対話のスタートラインをつくるために、国民民主党として「令和の時代のシン憲法改正草案」を提案します。
最後に
最後に、我が党の最大の強みは、多様性です。特に、15人中5人が女性ということです。国会議員の女性比率は未だ衆議院で9.9%、参議院で22.9%、全体では13.7%という惨状です。爆発的な変化を起こすために最小限必要とされる普及率、いわゆるクリティカルマスは30%だと言われています。
日本の公党の中で最も高い33.3%という我が党から生まれる政策がどのような爆発的変化を起こすのか、本当に楽しみです。たぶん、大爆発が起こると思います。
文学者のバーナード・ショーは「少数派しか世界を変えることはできない」と言っています。
「時代を変えたモノたちも、初めは少数派だったはず。」
皆さん、古い野党の、古い政治の形を変えましょう。それは、私たち自身が変わる挑戦でもあるし、時代を変える少数派の使命でもあります。
この使命を果たすため、今日この日から、国民民主党は再始動します。皆んなで力を合わせて、新しい日本の未来を作り上げていこうではありませんか。
国民の皆さん、ぜひ、ご期待ください。
乗る船は小舟ではありますが、変革の旗を高らかに掲げ、私たちは今日、船出します。
編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2020年9月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。