菅内閣が誕生した16日、霞が関の厚労省では離婚・別居によって子どもに会えなくなった母親たちが記者会見を開いていた。
無理やり一方の親と引き離されることなどが「子どもの権利条約」に反するとして、EU議会が日本に対して非難決議を可決するなど、離婚時の一方の親による子どもの連れ去り、引き離しは今、国際問題化している(「EUが日本非難!「子ども連れ去り」を止める法改正を」)。
会見では、「親子引き離し」の当事者女性23人が集まり、自身の体験などを語った。
不貞を繰り返す夫の元を離れる決意をしてから、夫と義母によって3人の子どもと引き離された30歳代女性Uさんは、夫が不貞行為をしていたのが原因で別居したにもかかわらず、子どもとの面会を認められない。月に一度、写真が送られてくるが、自身が子どもたちに宛てて送った手紙を破っている写真や、「死ね」「ババア」「バカ」などと書かれた紙を持っている写真や、中指を立てたポーズをしている写真だという。
このように、主に同居親が子どもに対し、別居親の悪口を吹き込んだり、別居親を無理やり拒絶させる行為や、それによって子どもが別居親を憎むようになる「片親疎外」は、親権を確実に依頼者のものにするために「離婚弁護士」が使う手法として悪名高い。子どもにとっては、どちらの親もそこから生まれてきた自身の一部であり、自分自身を否定することにもなる。片親疎外の行為によって、子どもが心に負う精神的な負担は計り知れない。
会見に同席した棚瀬孝雄弁護士は、別居・離婚時に親と引き離された子どもは「びっくりするくらい早く親を拒否する。片親疎外は、心の中も変わっていってしまう場合と、戦略的に拒否する場合がある。子どもも生きていかなければならないので、今一緒にいる親に合わせなければならない」と子どもの心理を説明し、そのような「弱い子どもだからこそ、社会が守ってあげなくてはならない」と訴えた。
同日、菅内閣で法務大臣に再任された上川陽子氏は、実はこの問題の解決に熱心であると、当事者の間からも期待が寄せられている。
今年6月に上川氏が会長を務める「自民党司法制度調査会」は、司法の役割について提言を行い、その中で「父母が様々な理由で離婚する場合であっても、子が両親の十分な情愛の下で養育されることが、子の成長ひいては日本の未来にとって重要であることはいうまでもない」と両親による養育の重要性を明文化、そのうえで「日本では、離婚を巡って夫婦間で子の連れ去りが起きたり、子と別居親との関係が遮断されるケースも少なくない」と親子の引き離しが起きている問題があることを認めている。
EU議会の非難決議に対し、外務省が「指摘されるような問題は存在していない」と逃げるなど、この問題はその解決の難しさなどから、「存在しない」と言われ続け、当事者は今度こそ法改正につながると、状況が変わるごとに期待をしては、裏切られ、置き去りにされてきた。
上川法務大臣は、今回の就任会見でも「両親が離婚された子どもたちなど、様々な困難を抱える方々への取り組みを推進していく」と明言。いよいよ離婚後の子どもの養育のあり方も法改正がなされるか。EUから貼られてしまった「子どもの人権に向き合わない国日本」のレッテルを返上できるのか。期待が高まっている。