スペインで資産高において3番目の銀行カイシャバンクと4番目のバンキアが9が今月17日に合併した。正確には前者が後者を買収したことになる。
連立政府内ではこの合併についてポデモスは反対していた。ポデモスがこの2行の合併に反対していたのは次のような理由からであった。(参照:okdiario.com:libremercado.com)
- この合併について政府内のポデモスはまったく知らされていなかった。サンチェス首相と第3副首相兼経済相ナディア・カルビーニョがこの合併に同意して進められていた。
- バンキアが倒産しそうになった時に政府は銀行再編基金(FROB)から240億ユーロ(2兆8800億円)を投入。合併が成立すればこの投入した資金が返済される機会がなくなることが懸念される。
- ポデーモスは自党の政策の一つに公立銀行の創設を挙げており、開発金融公庫(ICO)を将来的には公立銀行に変身させる意向をもっている。ところが、この合併が成立すると市場的に公立銀行が存在できる余地がなくなる。
- 2行が合併すれば、人員削減の必要性が生まれる。バークレイ銀行の調査では5700人、労働総同盟(UGT)によると、8000人の人員削減が見込まれている。ということでポデモスはこの合併にる大幅な人員削減が発生するとして反対している。
カイシャバンクとバンキアの両行はもともと貯蓄金庫として始めた経歴を持っている。前者はカタルーニャのブルジョア層を顧客に持ち、その後中小規模の9つの貯蓄金庫と銀行を買収して成長した。一方の後者はマドリードで貯蓄金庫としてトップの座を占めていたが、その為に10の貯蓄金庫を買収していた。その後、双方とも銀行としての業務ができるように改革された。
カイシャバンクは4460支店を持ち、3万5600人の従業員を抱え、バンキアは2250支店に、1万6000人の従業員となっている。両行が合併すると1411支店が双方で重複するようになるとされている。(参照:eleconomista.es:
例えば、筆者が在住している町でも両行の支店がそれぞれ存在しており、合併すればどちらかが閉店するようになるはずだ。また、従業員についても既に記述したように5700人から8000人が余ることになる。その削減が必要となって来る。
両行は2012年に合併するのではないかと囁かれた。ところが、当時政治的に干渉が入って合併は実現しなかった。というのも、カイシャバンクの前頭取だったイシドゥロ・ファイネーの野望はマドリードの銀行業界を征服することであった。
しかし、今回は時が熟したようで、コロナ危機を介して銀行の強化が求められるようになっている。しかも欧州中央銀行もこの合併に同意の意向を表明している。特に、同銀行の副総裁でスペインの元経済相だったルイス・デ・ギンドがこの合併の必要性を説いていた。
また、今回の合併を容易にした要因のひとつに両行のトップ同士がバスク出身ということも影響している。バンキアの頭取ファン・イグナシオ・ゴイリゴルサリはスペインの第2規模の銀行BBVAのジェナラルマネジャーだった人物でデウスト大学を卒業している。
一方のカイシャバンクのジェナラルマネジャーで実質的には頭取に匹敵する実務を行っているゴンサロ・ゴルタサルはマドリード出身であるが、彼の家系はバスクの名門家出身で、しかも前者と同様にデウスト大学を卒業している。
デウスト大学というのは1886年にイエズス会によって創設された大学でスペインのエリートを養成する大学としてよく知られている。特に、銀行業界ではデウスト卒の頭取や幹部がフランコ独裁時代から多く輩出されている。
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余談ながらBBVAはバクスを代表する2つの銀行ビルバオ銀行とビスカヤ銀行が合併してできた銀行だ。それにあとからアルヘンタリア銀行が加えられた。その後の人事の変遷でアルヘンタリア銀行出身のフランシスコ・ゴンサレスが頭取となってバスクカラーの強いファン・イグナシオ・ゴイリゴルサリが追い出されたような感じた。ゴンサレスが頭取になってからバスクの銀行としての精神が失われたとされている。
ということで、今回2行の合併は両行のトップ同士がバスクと関係が強いということも双方の合併のための理解を容易にさせたようだ。ゴイリゴルサリが頭取、ゴルタサルがジェナラルマネジャーに就任した。
この合併が成立したことによって資産高においてスペインで最大手銀行となる。それをこれまでの2大銀行サンタンデールとBBVAが黙っていることはない。すでに、噂にあるのはBBVAが5番目の規模の同じくカタルーニャを地盤とするサバデイル銀行を買収する意向にある。一方のサンタンデールは誰も予期しなかったがどの銀行も買収する意向がないことをつい最近公にした。自行のヨーロッパにおける営業網の強化をこれから図っていくという方針だという。