半沢直樹最終回から2週間近く、半沢ロスはまだまだ終わるところを知らない。
ということで、前回、半沢直樹帝国航空編のストーリーと登場人物のモデルについて書いた続編として、今回は「こわっぱー」と怒鳴りつける箕部幹事長の不正のモデルについて言及したい。
ストーリーのクライマックスは半沢VS箕部幹事長という、現実離れした大物代議士を一介の銀行員が追い詰めるという驚きの展開だ。しかも、一介の銀行員に国税庁の黒崎が手を差し伸べるという、これまたすごい展開にお茶の間は釘付けだった。
ストーリーがJALをモデルにしたことは周知の事実だが、実はこの現実離れしたストーリーにも元ネタでは?と思わせる事件がある。
東京佐川急便事件。
平成4年、天下の自民党副総裁、金丸信氏が東京佐川急便からヤミ献金を受けていたという事件だ。
この事件を東京地検特捜部は追い続けてきたが、金丸氏による激しい抵抗に決定的証拠を掴むことが出来ないばかりか、本人があっさり認め政治資金規正法違反で20万円の罰金という微罪で幕引きとなった。
当時、大きく報道された大物代議士のヤミ献金疑惑のあっけない幕引きに、「大物政治家には東京地検も逆らえないのか。政治家に手心を加えたのでは。」と国民の怒りは爆発、検察庁の看板にペンキをぶっかけられるという東京地検にとって忘れられない屈辱を味わった。
さて、ここで半沢ドラマに一度戻る。箕部幹事長の不正を追い続けた半沢だったが、あと一歩のところで、その資料は箕部幹事長の下へ。中野渡頭取と大和田、箕部を相手に土下座を強要されるもはねつけ、「絶対に許さない、千倍返しだ」を啖呵を切る半沢。このあたりは当時の東京地検特捜部長五十嵐紀夫氏の胸中と重なる気がしてならない。
続きがある。その後、大物を取り逃がした東京地検に一枚のメモがもたらされる。ヤミ献金で購入された日本債権信用銀行の割引金融債、ワリシンの購入履歴が記されたメモだった。出所は国税庁。この一枚のメモが引き金となり、家宅捜索を強行。既に証拠は別の場所に移されていたが、秘書を締め上げ保管場所を聞き出し、証拠を押収した。その結果、10億円の脱税により所得税法違反で金丸氏は逮捕される。千倍返しかどうかはともかく、「やられたらやり返す」という結果だったと言える。
こうしてみると、証拠を隠し、保管場所を移すなどの展開は似たものがあるし、東京中央銀行=東京地検、救世主・国税庁の黒崎はまさに国税庁そのままなのだ。黒崎が国税庁へ出向になったのは来るべきクライマックスの伏線だったのではないかと思う。
モデルらしき事件は他にもある。
親族企業の伊勢志摩ステートに転貸される20億円の資金で購入した土地が伊勢志摩空港になったという話は、田中角栄幹事長(当時)が親族企業に購入させた二束三文の土地がその後建設省の事業用地となり莫大な資産形成がされたと言われている信濃川河川敷疑惑が同じ構図だし、旧Tによる箕部幹事長への不正融資絡みは、政界の牛若丸と言われた山口敏夫元労相が親族企業に対する数百億円の不正融資に絡み背任容疑で実刑判決を受けている二信組乱脈融資事件を彷彿とさせる。
半沢直樹のように巨悪に果敢に挑み正義が勝つ社会であってほしいと願う多くの人々の中からは「でもドラマだからねー、現実はそうもいかないのよ」という声が聞こえそうだが、巨悪がちゃんと退治されるという現実もあるということを添えておきたい。
【半沢直樹】完全独自予想 箕部幹事長の錬金術にもモデルが?!