>>>「コロナ直撃、自治体の懐事情(上)中野区を例にリーマンショックから占う」はこちら
3. コロナショックによる特別区税、特別区交付金の推移
コロナショックの影響を占うため(上)ではリーマンショック当時の状況を振り返ってみたが、下図は今年(令和2年)7月31日の内閣府経済財政諮問会議「中長期の経済財政に関する試算」の予測値を基に中野区が想定した財政フレームである。
表の一般財源を図化すると下図のとおりで、コロナショックで税収が下がる見通しである。リーマンショック同様、税収が回復するまでに5年の年月を要する予測である。
4. 経済危機後の一般財源の推移
ここで話を簡単にまとめる。
自治体の裁量で使える一般財源がリーマンショック(実績)、コロナショック(予測)でどの程度、減収となるかを下図に示す。
リーマンショック後の一般財源の減収は2年後の63億円をピークとして、5年間で合計242億円、予測ではコロナショック後の一般財源の減収は1年後の92億円をピークとして5年間で合計215億円である。
中長期の経済財政に関する試算は1月31日と7月31日に更新されるため、最新の情報から判断していく必要があるが、現在において一般財源はリーマンショック級のダメージになると予測されている。
5. コロナショックを吸収する覚悟の行財政の構造改革の推進
中野区は、9月7日の中野区議会 第3回定例会本会議における行政報告で今後、区はこの行財政の危機に対し、抗っていくのかその指針を示された。来年度92億円を穴埋めすることを念頭に来年度の予算編成に取り掛かるとのことである。
中野区の財政調整基金の年度間調整分、いわゆる貯金は165億円あるもののこれに簡単に取崩すのでなく、さらに無駄を省いた行財政の運営を行うとの宣言であった。
まずは来年度予算削減に注力し、行財政の構造改革の推進をしていくとの二段構えである。
行財政の構造改革の推進は施策・施設・組織の再編を意図している。
下図は行政報告を受けて、私が抱いたイメージである。
リーマン、コロナとも5年程度のダメージを背負うことから、行財政の構造改革の推進は5カ年を目処に計画の構築をなされるべきだと考える。著者が考える5年間の財政効果の推移のイメージを示す。
まず来年度予算歳出抑制は区財政の骨格予算(最低限の自治体運営予算)ともいえるギリギリの運営にすべきである。
例えば、ここで区長が覚悟を決め、無駄を省き、評価が低い事業の削減、縮小を実行することで、財政効果を10億円、5年間継続すれば50億円捻出できる。
区長の覚悟が財政危機を回避することにつながるが、安易に行政サービスを低下させることは許されない。
そして行財政の構造改革の推進は効果が現れるのに時間がかかるため、徐々に効果は表れる。
具体例をあげれば、以下のような施設数の削減、民間活力の活用をすることである。
- 縦割り・所掌・所管を度外視した小中学校、区施設・センター、区営住宅、公園等あらゆる施設の再編
- 小学校内に児童施設、学童クラブを整備し、学校外にある児童館の廃止
- 区直営幼稚園・保育園の民営化による国都補助金の収受(保育園では行政コスト約32.7億円のうち10億円の行政効果)
- マイナンバー・デジタル化推進による窓口業務の負担軽減
- 今後、増加する専門職・キャリア採用(中途採用)を見越した新卒採用の抑制による職員ピラミッドの適正化
- 一時的な職員給与カット(バブルにより4%カット時代あり)
などを挙げさせてもらったが、やはり最後は区長の決断次第である。
「平時はボトムアップ、有事はトップダウン」が組織運営の基本であり、コロナ財政危機という有事にトップダウンをせざるを得ない状況である。
各自治体の首長の皆様も、大変厳しい状況であるとお察しするが、覚悟をもって予算編成に努められたい。