菅総理大臣は所信表明演説で、今後2年半のうちにほぼ全国民にマイナンバーカードが行き渡ることを目指すと述べたが、27日の武田総務大臣の閣議後記者会見によれば、昨年度、1日当たり約1万件であったマイナンバーカードの申請件数が、2019年9月以降、穏やかに増加に転じ、最近では1日あたり約6万6千件に増加しているそうだ。
先週私は電子証明書の更新のために区役所に出向いたが、確かに予想していたよりは多くの人がマイナンバーカードの申請に来ていた。
しかしそこで私が気になったのは、今後政府の期待通り1日あたりさらに多くの申請があった場合、窓口となっている自治体が十分に対応しきれないのではないかということだ。
とにかくマイナンバーカードの申請や電子証明書の更新などに手間と時間がかかりすぎる。
私の住居の近くには区の地域センター(出張所)があって、住民票や印鑑証明書などはそこでほとんど待つことなく入手できるが、マイナンバーカード関係の手続きになると、遠くの区役所本庁舎まで出かけなければならない。
先週、私が区役所に行ったときは、三密を避けるためにできるだけ人のいなさそうな平日の午前10時に行ったにもかかわらず、庁舎の玄関を入ってすぐのロビーに多くの椅子が置かれ、既にかなりの数の人が順番待ちをしていた。
マイナンバーカード関係の受付窓口は2つだけで、私は電子証明書の更新だったが、マイナンバーカードの新規申請の方と同じ窓口なので、案内・交通整理担当の職員から待ち時間は30分程度と言われた。しかし、それでもまだよかった方で、私の少し後に来た人は40~50分待ちと聞いてびっくりしていた。
30分ほどして私の整理券の番号が呼ばれたので窓口に行くと、手続きは持参した有効期限通知書とマイナンバーカードを提出し、更新の申請書に日付と住所氏名を書くだけで終わった。
拍子抜けするほど簡単だなと思っていたら、これは更新の申請の受付だけで、実際の更新手続きはまた別の窓口でするとのことだった。
そこで別の窓口の前に行ってさらに15分ほど待つとまた整理番号が呼ばれ、今度は窓口のタッチパネルを使って暗証番号を入力して更新を完了した。
私がしたことは本当に簡単な作業だけだったのに、区役所に入ってから出るまでに約1時間がかかった。
総務省によれば、今後マイナンバーカードの未取得者にQRコード付きの交付申請書を送付して、スマホやパソコンでの申請を促すそうだが、高齢者などITリテラシーの高い人ばかりではない。
それに私のように電子証明書の更新をする場合は、なりすまし等の不正防止の観点から、原則として本人が窓口に出頭しなければならないため、スマホやパソコンでの更新という訳にはいかないので、区役所の混雑緩和はあまり期待できそうにない。
なお、混雑緩和ではなくセキュリティの観点から気づいた問題だが、私は更新手続きの最初から最後までマスクを着用していたのに、一度もそれを外すようにと窓口で言われなかった。しかし、これだとマイナンバーカードの写真とマスクをした私の顔を目視で照合して本人確認をすることはできなかった、というか、しなかったに違いない。
これなら本人以外の人が手続きをすることができてしまうが、こうした現場の対応をしっかりしないと、マイナンバーカードを使った不正は今後増えていくだろう。電子証明書はマイナンバーカードの10年更新よりも短い5年更新を義務付けている以上は、顔認証システムをすべての窓口に設置するぐらいのことはする必要があるのではなかろうか。
記者会見で武田総務大臣は、全国の都道府県知事、市町村長宛にマイナンバーカードの普及拡大に向けた一層の取り組みを要請する書簡を発出して、商業施設への出張申請受付や申請サポートを積極的に実施すること、受付窓口や人員の増強、土日公布のさらなる実施などを要請したと述べられたが、ぜひ武田大臣には書簡を出すだけでなく、もっと具体的に交付体制の強化のためのガイドラインを地方自治体に示すとともに、その実施状況を強力にフォローアップして、マイナンバーカード申請がスムーズかつスピーディーにできるようにしていただきたい。そうしないと菅首相が目指すように2022年度末に、ほぼ全国民にマイナンバーカードが行き渡ることは難しい。