株式市場が世界レベルで好調となっています。直近でキーになった日が10月30日(金曜日)。この日を底に世界中の株式市場が目を覚ますような上昇に転じているのです。
この2週間足らずの間の上昇率はアメリカダウ11.1%、英国FTSE15%、東京日経平均10.3%、インドSENSEX10.0%といった具合で中国上海市場だけがアントの上場中止と巨大企業への規制発表を受け3.7%上昇にとどまっています。
いったい何が投資家に火をつけたのでしょうか?
このブログでも指摘した通りアメリカ大統領選に対するイライラ感が取れた、ということかと思います。ではバイデン氏の時代になるから株価が上がったのか、と言えばそれはあり得ますが、短期的に見ればトランプ氏が当選していても株価は上がったはずです。つまり、どちらでもよかったというのが私の見方です。
大きな枠組みで見るといくつかのファクターを組み合わせる必要があると思います。そのファクターとはコロナとワクチン、大統領選、追加支援策、ドルの価値、金融政策、外交かな、と思っています。思った以上に複雑系の想像力を発揮しないとこのパズルの解は出てこないと思います。
まず、コロナは一般的にはネガティブ一方でした。確かに日本の報道では運輸や旅行業、飲食業を中心にガタガタであることを強調しています。一方、日経には21年3月期の決算の上方修正組が32%もあり、そのうち、製造業が全体の6割、金額ベースでは9割を占めるとあります。確かに7-9月決算の報道を見ている限り大幅増益、最高益の字が躍るところもあります。ここで多くの人は騙されたのだとみています。
北米や日本ではワクチンのニュースで航空会社の株価が急騰しました。ビジネスの回復期待なのですが、見方を変えれば投資家は投資先を貪欲に探しており、先の先を読んで安いうちに仕込んでおくという行動に出ています。
では私がなぜ、大統領選の結果を重視せず、そのお祭り行為が終わったことに意味があると申し上げたかと言えば最終的には議会との関係が最大軸だからです。そしてアメリカ議会は今、ボロボロであり、民主、共和双方がいがみ合うだけの関係であります。つまり、アメリカには下院、上院、そして大統領という3つのクリティカルパスが複雑に絡み合い、誰が大統領をやろうともよく言えば抑止力、悪く言えば大きな判断を下せない「民主主義という名のナローバンド型政治」になり下がったとみています。
コロナがさっぱり収まらないため、欧米は追加支援策を講じなくてはいけないのですが、アメリカに関して言えばそもそもバイデン氏がとてつもないインフラ整備への投資を打ち出し、大きな政府でばらまく予定にしています。これが財政を痛め、最終的には増税になるのでアメリカ企業の体力はじわじわと体温が奪われるような状態になることを予想しています。これはドル安にならざるを得ないわけで海外からアメリカへ投資マネーが向かいにくくなります。これはアメリカを取り巻く主要国の株価を刺激することになるのです。
金融政策を見ると欧州のマイナス金利の深掘りが進んでいます。10年債を見るとドイツのマイナス0.6%を先頭にフランス、オランダ、スイスなどはどっぷりマイナス圏、あのギリシャやイタリアですら1%以下なのです。このレベルの金利が少なくとも数年間は続くと見込まれるのですから定期預金にお金を入れていても何も生み出さないのです。これらのマネーが株式市場に少なくない比率で流入を続けます。
最後に外交ですが、基本的には平和が株価には最もプラスになります。不穏な動きがないわけではありませんが、かつてのイスラム国やアフガンのテロ、中東の自爆テロは少し収まっています。世界全体的に指導者が戦争よりもコロナ対策で忙しくなったことが株式市場を刺激しているとすれば「風が吹けば桶屋が儲かる」的ですが、コロナのおかげで株価が上がったとも言えなくはありません。
では最後に今後、どうなるかですが、私は予想屋ではないのであくまでも個人的見方ですが、一進一退を繰り返し、また国によりそのばらつきはあるものの年内はもう少し上昇してもおかしくないかと思います。特に日本の株式はまだ安いとみています。日経平均3万円はすぐというわけではないですが、遠くにその旗がちらちら見えるようなところにあると考えています。
大統領選挙で潮目は変わると申し上げました。概ねその通りになっています。次の潮目は大統領就任式の頃ではないかとみています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年11月12日の記事より転載させていただきました。