国会がはじまったこの時期は、ソーシャルセクターにとって政策提言シーズンになります。業界組織である新公益連盟として、すでに11月5日に公明党さん(内閣部会・NPO局)、11月12日に自民党さん(団体総局NPO・NGO関係団体委員会)、11月17日に超党派のNGO・NPOの戦略的あり方を検討する会にて、提言を行いました。また24日には、立憲民主党さんに提言を行う予定です。
コロナ禍で、ソーシャルセクターは何を政策提言すべきか。新公益連盟の加盟団体や幹事の皆さんと議論を重ねた上で、本年度提言している内容を紹介したいと思います。
1.ソーシャルリカバリー(NPOを雇用の受け皿に)
コロナ禍からの復興を目指して、諸外国では「グリーンリカバリー」というキーワードの下、気候変動対策を行いながらの経済復興が目指されています。日本では、社会課題解決をすすめながら、雇用・経済でNPOが役割を果たしていく「ソーシャルリカバリー」が必要と考え、訴え続けています。
非正規雇用の方を中心に雇用はすでに不安定となっており、因果関係は慎重に考える必要がありますが、自殺者が7-10月と4ヶ月連続で前年比上昇していて、10月は前年比614人増の2,153人、特に女性は1.8倍になるなどの状況があります。第3波が来ている中で、2021年は雇用の底が抜けるとソーシャルセクターは危機感をもっています。
東日本大震災では、被災者の見守りで数百人の雇用を行うなど、期間限定の社会的事業に失業者を雇用しました。被災者雇用と、コロナ禍に対応する社会的事業を両立する取り組みを進めたいと、政府に提言を続けています。
2.法人の寄付金控除(企業による支援拡大へ)
個人による認定NPOへの寄附については、国税地方税あわせて、寄付額の50%が戻ってくるという、大きな税制度を日本社会はすでに持っています。それに対して、法人による寄附制度は充実していません。
まず法人は個人と違い、税額控除(税金がひかれる)ではなく損金算入(経費扱いできるのみ)しか認められていません。またその損金算入も利益の2-3%が上限です。したがって、仮に10億の利益を出している会社でも、認められる損金算入は2-3千万円までであり、減税額は600-900万円に留まります。
コロナ禍ではありますが、株価はバブル期並に戻り、業績好調の会社も少なくなく、内部留保も過去最大。他方、SDGsやESG投資の拡大の中で、社会的役割を模索している企業も増えてきました。個人だけでなく、企業も、ソーシャルセクターを支えるための役割を果たしてほしいと、政府に提言を続けています。
3.寄附の拡大(自治体による支援拡大へ)
企業に加えて、地方自治体もソーシャルセクターを支えてほしいと考えています。コロナ禍で政府からは地方自治体に3兆円の支援が行われました(臨時交付金)。また企業から自治体に寄附する場合はNPOと異なり、上限なしで100%損金算入です。加えて60%法人税減税も組み合わさり(企業版ふるさと納税)、上限はありますが寄付を実質1割負担で行うことができます(1000万円寄附しても100万円の負担で済む。NPOだと企業負担700万)。
他方、自治体の職員数や予算には制約がかかっていて、なかなか社会的事業を力強く推進できない事情もあります。そこで、毎年毎年一定の費用を地域NPOのために捻出し、時間をかけて地域の共助を支えていくような仕組みを、国としても応援してはどうかと提言しています。
これまでの進捗について
NPOへの政策は、与野党をこえてサポートをしてくださっています。これまでに、「コレクティブインパクトを政府方針(骨太の方針)に追加」「国家公務員のNPOへの兼業解禁」「不動産などを寄附した場合の非課税特例拡充」といった取り組みが実現されました。
また今年も春先にコロナ禍に対応した提言をNPOセクター全体で行ってきましたが、そうした中で持続化給付金を寄附の減収にも活用できることにもつながっています。先週、家賃支援給付金も寄附型NPO法人が対象拡大されることも決まっています。
NPOの役割には、社会課題の認識拡大(社会化)、課題解決のためのモデル事業の推進(事業化)、制度への反映(制度化)の3つがあります。NPOが健全に発展し、また社会課題を時代にあった形で解決するためには、政府や自治体による理解が欠かせません。各党代議士の皆様の理解と尽力に心から感謝するとともに、新公益連盟としてさらに政策提言の幅を深めていきたいと思います。
編集部より:この記事は、一般社団法人RCF 代表理事、藤沢烈氏の公式note 2020年11月22日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は藤沢氏のnoteをご覧ください。