ビットコイン価格急上昇の背景には過剰流動性とチャイナマネーがある

ビットコインの価格が急上昇している。今年初めには1ビットコイン=90万円前後を推移していたのが、今では190万円を超え、2倍以上となっている(11月21日現在)。

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今年の3月に新型コロナショックで株価が急落するのと同時にビットコインの価格も一時急落したが、その後は株価が急回復したのと歩調を合わせるようにビットコインの価格も上昇し、特に10月以降は上昇の角度もかなり急になって来ている。この結果、今月18日にはビットコインの時価総額が、ビットコインバブルの天井だった2017年12月時点の時価総額を抜いて、史上最高額となった。

このビットコイン価格の急上昇の理由について、テレビやネットでは、コロナ禍の中で主要国の政府・中央銀行がかつてない規模の財政支出と金融緩和を行っているため、今後のインフレの可能性に備えてヘッジのためにビットコインが買われているという説明がされることが多い。インフレに負けない資産として、金や株と並んでビットコインに資金が流入しているというのだ。

もう一つ、マスメディアでよく理由に挙げられるのは、2017年の価格上昇時と違い、今回は個人だけでなく大企業も資産運用等の目的でビットコインを購入していることだ。ツイッターのCEOのジャック・ドーシー氏が経営するオンライン決済サービスのスクエア社が、その資産の1%に相当する5000万ドル(約52億円)をビットコインの購入に充てたとか、ナスダック上場企業のマイクロストラテジー社が4億2500万ドル(約440億円)相当のビットコインを購入したなどのニュースが次々と報じられている。

また、世界的な大手決済サービスのPayPalが最近になってビットコインなどいくつかの暗号資産を購入することを可能としたことから、PayPalを通じたビットコイン市場への資金流入も期待されている。

これら二つの理由はいずれも間違いではないが、もっと根本的な理由がある。

史上最大規模の財政金融政策による通貨価値の希薄化(すなわちインフレ)を懸念するのであれば、ビットコインと金は同じような動きをしてもよさそうだが、そうなってはいない。金価格は今年8月までは急上昇したが9月以降は下落傾向にある。

また、スクエアやPayPalなどのニュースはごく最近のものなので、直近の価格上昇は説明できても、4月以降の右肩上がりのチャートの説明にはならない。

私は今春以降のビットコインの価格上昇の根本的な理由は、世界の過剰流動性のせいだと思っている。主要国政府・中央銀行がばらまいた資金が、株、デリバティブ、商品などの市場に流れ込んで価格を押し上げている現象のひとつなのだ。

そして、このビットコインの過剰流動性相場をさらに盛り上げているのが、チャイナマネーだ。

中国政府は、暗号資産を使った資本の海外流出や、投機加熱による社会不安の発生防止を目的に、2017年から翌年にかけて立て続けに暗号資産市場の抑圧に乗り出し、現在では国内の暗号資産取引所はすべて閉鎖され、銀行は取引所のための口座開設を禁じられ、国民は海外の取引所へのアクセスを禁じられている。

しかし、こうした中国政府の弾圧があっても、それをかいくぐって暗号資産の取引を続けるのが中国人民であって、取引所がだめならOTC(取引所外の相対取引)を使って個人も企業も暗号資産を盛んに購入している。また、外国人の本人確認証を闇市場で購入し、VPN回線を通じて海外の取引所にアクセスするといったこともしているらしい。

こうした中国人の行動の根底には、人民元の減価リスク回避に止まらず、中国の金融システムの健全性への不信や、究極的には政府さえ信用しない中国人の心理がある気がする。

こうして依然として盛んに暗号資産を売買している中国人だが、ビットコインの購入には政府の監視の目が厳しいことから、価値が米ドルに固定されているテザー(Tether、単位はUSDTと表記される)などのいわゆるステーブルコインをOTC取引で購入することが主流となっているようだ。テザーは価格変動の激しいビットコインと違って、米ドル建て資産と同じなので、常に保有しておく暗号資産としては安心なこともテザーに人気がある理由となっている。

しかしその一方で、投機をすることが飯より好きな中国人は、ただテザーを持ってじっとしているだけではあきたらないことも事実のようだ。ビットコインの相場が急上昇しているのを見ると、すぐにテザーをビットコインに替えて、値上がり益を狙っている。

ビットコインの通貨別の取引シェアを見ると、テザーのシェアが6割近く(11月22日時点)ととても大きいが、これはとりもなおさず中国人がテザーでビットコインを買っていることを反映しているのだ。

中国政府も、ここに来てOTC取引の規制に動き始めているようだが、テザーの動きにまだ目に見える変化は現れていない。

ただし、いずれにしてもいつまでも上がる相場はないので、ビットコイン相場も早晩天井を打つと思われ、そうなればチャイナマネーはまた潮が引くようにビットコイン市場からテザーに戻っていき、ビットコイン相場の下落に加速度を加えることとなろう。

今回のビットコイン価格の上昇がどこまで続くか、ここ当分はビットコイン市場から目が離せない。