共同通信が11月30日に「権力に批判なければ学問でない 学術会議任命拒否、国会内で集会」という記事を配信した。神奈川新聞や東京新聞などのサイトに、すでに同タイトル・同内容で掲載されている。
記事には次のように書かれている(太字は筆者)。
菅義偉首相が日本学術会議の会員候補6人の任命を拒否したことに抗議する集会が30日、国会内で開かれ、学者や国会議員、市民ら約300人(主催者発表)が参加した。
「国会内」という表現に違和感を覚え調べてみた。その結果、「菅政権による検察・行政の強権支配を糺す会」主催で「許すな憲法破壊!菅政権による日本学術会議会員6人の任命拒否は憲法違反」と題する集会が、衆議院第一議員会館地下の大会議室で開催されたと分かった。
しかし、「国会内」と「国会議員会館内」は大違いである。
国会議員会館には大小多数の会議室があり、国会議員は議員活動のために利用できる。僕も情報通信政策の勉強会のために、議員にお願いして会場を押さえてもらったことが何度もある。
だから、今回は野党の国会議員が確保した会議室で、関係者が集会を開いただけなのだ。記事には「集会には、野党の国会議員らも駆け付けた。」とあるが、会議室は国会議員が利用するものであり、市民だけでは集会は開けない。
「国会議員会館内」を「国会内」と書いただけだが、これはフェイクニュースと言われても仕方がない間違いだ。国会議員会館の会議室がそんなに簡単に利用できるとは知らない多くの国民に、抗議の大きなうねりが国会内まで押し寄せたと、読み取らせようとしているからだ。
糺す会の集会でスピーチした一人(青山学院大学教授)は、共同通信の記事にも写真付きで登場している。これも意図的。
他のスピーカーは、鳥越俊太郎氏、望月衣塑子氏、佐高信氏、平野貞夫氏、古賀茂明氏と、金太郎あめのようにいつも登場する反対派ばかりだ。
12月11日の朝刊に配信記事を掲載する地方紙もあるだろう。フェイクニュースとまで言えるかは意見の余地があっても、少なくとも読者の誤認を招くミスリード記事が拡散していくのを目の当たりにするのは愉快ではない。