12月になり1年の総まとめ的な話題が増えてきました。その先陣を切って流行語大賞と日経のヒット商品番付が発表になりました。
まず、流行語大賞ですが、この長ったらしい正式な呼称「『2020ユーキャン新語・流行語大賞』(『現代用語の基礎知識』選)」の部分を理解されている方は案外少ないかもしれません。流行語大賞は1984年から「現代用語の基礎知識」を発刊している自由国民社が授与者なのですが、提携している通信教育などを営むユーキャン社(非上場)がその冠企業(スポンサー)となっているという構図です。
「現代用語の基礎知識」は50代ぐらいの方は記憶があると思います。就職試験の際、この辞書(区別上は雑誌)から問題が出やすいから読んだ方がいいといわれていたからです。実際にはどれぐらい活用されたかわかりませんが、確かに直近1年で社会経済政治をにぎわせた言葉が掲載解説されている点で現代人の常識を補うという役目を担っていました。今でももちろん発刊されていますが、最近は大学の教授が学生にこれを勧めているとは思えませんが。
さて、コロナ禍の2020年、やっぱりこれかと思わせたのが流行語大賞とヒット商品番付でした。「三密」(流行語大賞)と「鬼滅の刃」「オンラインツール」(「ヒット番付」東の横綱、西の横綱)であります。
三密についてはそれを連呼し、啓蒙したという理由で小池百合子氏が受賞、これを受けた加藤勝信官房長官が「これは自分が厚労大臣の時に一番初めに述べた言葉」とややとげがあるというか、悔しさを呈しています。ちなみに受賞基準は「その『ことば』に関わった人物、団体を顕彰する」(ウィキ)とあり、必ずしもその言葉の創作者とは限っていないことから連呼して広めた点で小池さんに軍配が上がったのかもしれません。コロナと自民党となると途端に弱くなる体質をここでも引きずったように見えます。
一方、選考委員からも苦言が出ているようです。トップ10のうち5つがコロナ関係の言葉だったことに対して国語学者の金田一秀穂、杏林大学教授が「うんざり」と述べ、来年はどうなるかと思うと「ばかばかしい気もする」と吐露しています。つまり、本当にこの流行語大賞の選定に意味があるのか、という疑義なのでしょう。審査基準も明白ではない中、そろそろ形を変えてもよいのかもしれません。そもそも「現代用語の基礎知識」の時代ではないのだと思います。
では日経の「ヒット商品番付」です。こちらは日経MJというマーケティング雑誌が1971年から始めた番付でこちらもかなりの知名度があるかと思います。ちなみに1971年の番付はジーンズ、浄水器、カラーテレビ、かつら、ミニサイクル、電子ジャー、パンストとなっています。今聞けば爆笑ものかもしれませんが、もう一つ気づいていただきたいのは全部モノだということです。
歴代の流れを見ると79年、81年に金(ゴールド)がランク入り、バブル絶頂期の89年はアルマーニ人気に押されて「イタリアンファッション」、95年はやはり「ウィンドウズ95」でこの辺りからモノよりソフトやサービスが増えてきます。00年と08年に「ユニクロ」、04年は「韓流」、10年の「スマホ」、よくわからないのが16年の「安値ミクス」、そして19年が「ラグビーW杯」でした。
今年、ランクに入ったリストを見るとやはりこちらもコロナ絡みがずらり。私が見る限り18件のランク入りのうち半分はコロナ関係のように見受けられます。ちなみに1位のオンラインツールはZoomを指しているのだろうと思います。そのZoom社の8-10月決算は売上が前年同月比4.7倍、利益が90倍にもかかわらず決算発表の翌日に前日比15%以上下げる暴落を演じています。理由はワクチンがもうすぐ出回るからZoomじゃないだろう、というわけです。株価ではワクチンとZoomは背反の関係ですから今年のヒット番付から早くランク外に落ちてもらうことを祈るということでしょうか?
流行語、ヒット商品という観点から見れば2020年は確かに寂しいものがあったのですが、今までなかったようなものが大きく育ったものがたくさんあります。「宅配」や「おうち料理」では新たな市場が生まれました。もちろん、Zoomで生活スタイルのあり方も変えたと思います。郊外に住むという方もいらっしゃいました。「ソロキャンプ」のようにおひとり様の行動も増えた一年でした。「アベノマスク」は安倍前首相にとっては今となっては苦笑いなんでしょうか?あの小さいマスクはやっぱり変でした。
こう見ると国民がほぼ同じ境遇で苦しんだ年だったともいえるのでしょう。誰もが強い印象を持った年になりました。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年12月2日の記事より転載させていただきました。