東京で重症者が増えているから、65歳以上や基礎疾患のある人のGo Toトラベルの自粛要請をする。こんな非科学的な対応で恥ずかしくないのかと思う。与党議員が本当にこれでいいと考えているなら、この国はお終いだ。
私のような65歳以上の持病持ちは、通勤時間も恐る恐る周りに気遣いながら電車に乗っている。すでに、できる限りの配慮は実施している。おそらく、最も経済に対して実害のない線で、国と都が妥協したのだろうが、命の軽視だ。
経済が回らないのなら、観光産業も飲食産業など打撃を受けた業者に直接補助金を配布すればいいと思う。予約が入ったと思ったら、キャンセル続出、これでは現場は振り回されて疲弊するだけだ。Go Toに関わる業者の介在なくても、補助できる方法はあるはずだ。経済が元通りになるためには、感染に対する不安を取り除くことが不可欠である。命に対する不安感を払拭することが、経済を取り戻す最善の薬ではないのか?
どこから見ても、今の対策は手ぬるいし、欧米の歩んだ道を後追いしているようにしか見えない。米国の新規感染者数は1日20万人を超え、2500-3000人が命を落としている。世界全体だと、1日の新規感染者数が60万人を超え、1万人以上がコロナ感染で亡くなっている状況である。1日の新規感染確認者数が1万人を超える国は12か国に及び、増え続けている。今日、シカゴの友人と話をしたが、まだまだ、厳しい行動制限が続いている。
日本の医療現場は逼迫ではなく、崩壊の寸前である。年末年始の1週間は、病院に勤務する人の数が非常に少なくなる。東京で勤務する65歳未満の人には、Go Toトラベルに制限がかかっていないのだから、多くの人が休暇で東京外へ行ってしまうかもしれない。そうすると、医療供給体制は今よりも格段に脆弱となる。そして、感染拡大が続けば、コロナ患者への対応ができないだけでなく、心筋梗塞や脳卒中などの時間を争う疾患への対応ができなくなる。
東京外に無症状感染者が行けば、感染は広がる可能性が高まる。コロナPCR検査が陽性でも無症状であれば、他者に感染させないと信じている人が今でも少なくない。都知事は東京のことだけを考えているのかもしれないが、医療供給体制の十分でない他府県に感染を広げ、そこで医療崩壊を招くリスクを考えてほしいものだ。
こんな状況でも、国民に語りかけない国のトップでいいのか?ジョンソン首相、マクロン大統領、メルケル首相、みんな危機的状況を克服するために国民に呼びかけている。命を大切にしない政治でいいのか?野党も、桜や贈収賄もいいが、やはり、国民の命を最優先すべきだ。といっても、国会はすぐに閉会する。面倒だから議論はしない。
Worldometerによると人口100万人当たりのPCR検査数は日本は世界151位だ。まさに、黄金の国ジパングの時代を生きているようだ。これでいいのか、この国は?
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年12月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。