凋落の新聞社、報道の向かうところ

リアルの新聞を長らく触っていないという方は多いでしょう。配達された新聞が一度も見られることなく古新聞の束が詰みあがる状況に特にマンションにお住まいの方は置く場所もないから購読を止めるという流れは止まらないと思います。今、新聞を毎日購読している層は50代が約20%、60代が30%、70代が20%程度とされ、全体の70%を占めます。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

高齢者に偏るのは昔からの習慣、退職して時間がある、パソコンがうまく使えない、スマホは字が小さくて読めないといったところが理由ではないかと察します。とすれば習慣化している年齢層が更に高齢になれば新聞の定期購読層の落ち込みは止められない状況に変化はありません。

ちなみに朝日新聞は500万部割れ、読売も700万部割れが迫る状況。毎日新聞は200万部の攻防にあり、中日や日経にも抜かれる凋落ぶり、また全国紙では産経がずぬけて低い130万部割れの状況にあります。その朝日新聞について「思想的ライバル」産経が「朝日新聞419億円赤字、社長退任の意向 中間決算9年ぶり」と報じ、仲間内の毎日新聞も朝日の惨状の詳報を発しています。

新聞社は情報を収集し、その中身を校閲し、印刷を通じて購読者に情報を提供するのが従来のビジネスの流れです。ところがこの情報は収集段階の能力差、新聞社の方針、編集や校閲のチカラ、そして時として世論や政府、広告主の圧力などが加味され、購読者に届くときには生の情報収集時からさまざまな色をつけたものが届けられます。この色合いに対し、読者層の好みができます。

朝日新聞はなぜ凋落したのか、いろいろ見方はあると思いますが、私は二つの「吉田」に関する報道、つまり吉田清二治氏の慰安婦報道事件と原発事故の際の吉田昌郎元所長に対する調書事件が朝日の品格を崩したことを挙げたいと思います。そして社会部出身の渡辺雅隆社長の紙面づくりへのスタンスがあまりにも偏ってしまい、安倍政権や与党を攻撃するだけの野党の遠吠えのような新聞に成り下がってしまったことも大きいと感じています。なぜ安倍政権バッシングを続けたのか、ですが、社会部出身だけに目線が庶民的になりすぎ、かつて言われた日本唯一の高級紙志向のような品位のかけらもなくなったことはあると思います。つまり、発行部数を気にするあまり、大衆の声を反映しすぎたとも言えます。

私は新聞社がもつフル機能、つまり取材から新聞販売という一連の流れを電気や通信会社で議論されているように分離したらどうかと考えています。新聞社の特技はやはり取材能力。とすればその記事ネタを販売し、新聞発売機能を止めてしまったらどうか、あるいは主要紙を半分ぐらいにしてしまったらどうかと思うのです。

大きな記者会見となれば200人ぐらいの取材陣が集まるとされますが、私にはさっぱりわからないのです。記者会見する人は同じ。あと質疑応答で深掘りするという流れですが、全員が質問できるわけでもありません。極論すれば10人も取材陣が集まればよいのではないでしょうか?テレビなど鮮度を売りにしている業界には高く売れるでしょうし、深掘りして解説までつけたものを雑誌社などに販売するのもアリでしょう。

多くの人はネットで情報を収集しています。そのネット記事は共同や時事通信のような配信型やあまり聞いたことがないネット専業型マスコミ、そして大手新聞社が散発的に配信するという感じでその存在感はかなり低いのが実情です。理由は無料で記事を見せたくないからなのでしょう。ネットで面白そうな記事をクリックしても「ここから先は有料です」と出てします。こうなると増え過ぎたメディアをそろそろ整理する時期に来ているのではないかと考えています。

最後に情報の質ですが、ネットを探れば確かに様々な情報が飛び交っています。主要紙、大手メディアでは取り扱わない「俺だけの情報」もあったりするのですが、信ぴょう性とバランス性が全体の中でどういう位置づけなのかわからず、大手の校閲能力に一日の長があると考えています。私は主要メディアはそのクオリティを磨き続けながら取材と蓄積されたデータを駆使した記事の品質向上に努め、差別化を図り、生き残りを模索してもらいたいと思っています。

ヤフーのニュース欄でニュースライブはTBSと日テレから選べます。本来であれば左派と右派という組み合わせなのですが、世の中、「ニュースのTBS」というイメージが強まっている上にプロゴルファーの渋野日向子さんにもぐもぐタイムのやらせショットを取らせようとした日テレは大罰点です。個人的には日テレがニュースをもう少し頑張ってもらいたいのとフジテレビと産経の関係をもう少し改善できればまた違ったニュース報道が期待できるのではないかと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年12月4日の記事より転載させていただきました。