先日、議会開設130年の記念式典が行われました。1890年、わが国はアジアでいち早く議会制民主主義を確立し、戦後の民主化にあって国会は大きな役割を果たしました。
130年という長い歴史の中で、私は20年間、国会の議席をいただいてきました。私が初当選した20年前の国会は、党首討論が華々しく始まり、憲法改正の調査を目的とした憲法調査会が設置されるなど、改革の熱気に溢れていました。2002年から2003年にかけては、政府提出の有事法制案を与野党で一年かけて大修正し成立させました。
記念式典では天皇陛下から「国会、ますます重要」とのお言葉を頂きましたが、私の見たところ国会の機能は明らかに低下しています。党首討論はここ数年、ほとんど開かれなくなり(今年は開催されず)、憲法調査会を引き継いで設置された憲法審査会もまともな議論がほとんど行われていません。2015年の安保国会以降、安全保障についても本質的な議論は行われていません。
コロナ対策と経済対策の両立、綻びが目立つ社会保障制度改革、尖閣問題に代表される安全保障など課題はいくらでもあります。国権の最高機関をいかに復権するか、現職議員である我々は歴史的な責任を自覚する必要があります。
ブラック企業ならぬ『ブラック霞が関』
厚労省元官僚である千正康裕氏が書いた「ブラック霞が関」が永田町、霞が関界隈で話題になっています。「ブラック企業」という言葉は定着していますが、企業以上にブラックなのが霞が関だというわけです。
統計上の霞が関で働く官僚の年間超過勤務時間は350時間ですがこれは建前です。「官僚の働き方改革を求める国民の会」アンケートが実態を示しています。
720時間(労基法の年間超過勤務上限)超えが65.6%
1000時間(過労死ラインは960時間)が42.3%
1500時間超えが14.8%
明らかに異常です。現実にキャリア官僚志望者はこの20年で半減しています。官僚の長時間労働の最大の原因の一つが国会対応です。霞が関の超長時間労働を無くすために国会議員ができることは数多くあります。
- 官僚は部下ではないと認識する(大臣等を除く)
- 質問通告を早める(公表も)
- 質問主意書は本当に必要なものに限定する
- 調べものがある時は原則として国会図書館や調査室に依頼
霞が関の働き方改革を実現するためにも、国会改革は待ったなしです。
ワクチン接種は大仕事
新型コロナワクチンの接種無料化を柱とする改正予防接種法が成立し、ワクチン接種は国が費用を全額負担し、健康被害が出た場合の製薬会社への損害賠償は国が肩代わりすることになりました。国の責任は明確になりましたが、国民のワクチン接種は市町村が行うことになります。
誰から接種(通知)するか
接種する場所をどうするか
望まない(躊躇する)人にどこまで接種を勧めるか
私はすでに地元自治体のサポートを行っていますが、集団接種に近い作業を行う市町村にとって大仕事になります。接種は原則『努力義務』となっていますが、ワクチンが普及しなければコロナは終息しません。皆さんも今後行われるワクチンについての説明を確認した上で、接種について前向きにご判断いただきたいと思います。
三次補正予算で考えるべきこと
先日発表された7-9月期のGDP統計を見ると、前年比で年率30兆円以上落ち込んでいます。私は景気のバロメーターとしてタクシー運転手さんの感覚を参考にしていますが、第三波の襲来で11月から景気が更に冷え込んだことは間違いありません。
最優先すべきは社会的弱者への対応です。私自身が政府に求めてきた『ひとり親世帯臨時特別給付金』が1人あたり最大5万円追加されることが決まったことは評価したいと思います。コロナの陰に隠れて、児童虐待や自殺が増えていることも気がかりです。引き続き政府と自治体に対応を求めていきます。
若者を支える仕組みも重要です。景気の急激な落ち込みで学生の就職内定率も大きく下がっています。深刻化している8050問題の原因の一つは、90年代からの就職氷河期です。コロナで新たな氷河期世代を引き起こしてはなりません。
Go Toキャンペーンも継続の方向ですが、コロナの第三波が襲来する中で取り扱いは難しい判断です。制限した場合の景気の落ち込みは政府が補うしかありません。その他にも、雇用調整助成金の特例措置の延長、国土強靭化のための公共事業など三次補正予算は『規模』が求められます。
私の地元でも国土強靭化は最優先課題です。先日、狩野川放水路を視察しながら、狩野川流域の治水について関係者と議論してきました。来年は第二放水路の実現に向けて第一歩を踏み出したいと思っています。
いよいよ総選挙の年が明ける
浮き沈みの激しい政治生活も20年になりました。安全保障で左傾化した民進党を離党し、保守二大政党に挑戦した希望の党の結党も失敗しましたが、自ら決断して挑戦したことに悔いはありません。
自分の選挙だけ考えれば野党連携の中に身を置くことが有利ですが、それでは政治理念を貫くことができません。間もなく政治生命を賭けた挑戦の年が明けます。
編集部より:この記事は、衆議院議員の細野豪志氏(静岡5区、無所属)のnote 2020年12月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は細野豪志オフィシャルブログをご覧ください。