明治の47都道府県:人口順位では新潟1位、兵庫2位 

八幡 和郎

日本史が面白くなる47都道府県県庁所在地誕生の謎」 (12月9日発売予定、光文社知恵の森文庫)という本で、経緯や都市の歴史、地形と都市開発の歩み、役所の庁舎の変遷などについて書いて、江戸時代・戦前・現在の重ね地図もつけた。「地方の衰退」と「東京集中」といわれるが、都道府県所在地のほどんどは元気だ。都道府県内で一人勝ちで国際的に見ても立派な都市としての風格も備えてきて、日本は47の都市連合のような風情になってきた。

残念なのは、よその都道府県所在地のことをあまり知らないことだ。町の歴史を理解し、魅力を発見し、質の高い町づくりをするためにも、よその都道府県庁所在地と比べることはとても大事なのにと思う。

本書は全国47都道府県の都道府県庁所在地が置かれるまでの経緯や都市の歴史、地形と都市開発の歩み、役所の庁舎の変遷、観光名所や文化、出身有名人などについてコンパクトな読み物にし、江戸時代・戦前・現在の重ね地図もつけた。

歴史・観光・建築や都市開発を知るためにも便利だと思うが、とくに、ビジネスマンの出張先として都道府県庁所在地は圧倒的な割合を占めている。県だけでなくその町について知っておくことには実用的な意味も大いにあると思う。

下記に目次の一部を掲げておくが、47都道府県の県庁所在地をキャッチフレーズでいえばどうなるという資料になると思う。

重ね地図は福岡市と千葉市の分を掲げておく。標高を入れてあるのも、同種の他のものと違う。その都市の形成過程を見るにはコンクリートの下の地形が分かった方が理解しやすいからだ。

ところで、47都道府県がどうしてできたとか、県庁所在地がどうして決まったかと言うことについては、別の所に『47都道府県所在地が決まった正確な歴史 【都市伝説】に惑わされない知識の重要性』という記事を書いたので、参照されたい。

一方、ここでは明治22年の人口順位を紹介しておきたい(画像参照)。なぜ、明治22年かというと、47都道府県が確定したのが明治21年だからだ(境界変更はそのあともある)。

廃藩置県は、明治4年の7月である。このときは、藩が県になっただけでサイズもバラバラで3府302件だったが、11月に「第1次府県統合」が行われ、よく似たサイズの3府72県となった。

しかし、弱小県では統治がうまくいかなかったりしたので、徐々に合併が行われ、明治9年には「第2次府県統合」が行われ3府36県となった。しかし、こんどは、高松から松山に行くのは遠いとか、鳥取が石高の下の松江の風下に立ちたくないとかいう話も出てきたので、山縣が調整して富山、福井、奈良、鳥取、香川、徳島、佐賀、宮崎が少し遅れて成立し、北海道が設けられて、47道府県で落ち着いたというわけだ。

明治政府としては、できるだけよく似た人口にしたかったのだが、いろいろ事情があった。全体の中位は富山県の47万人だが、少ない方では、北海道と沖縄は当時は人口は少なかったが、遠隔地であるので単独にした。鳥取、宮崎、奈良は執拗な独立運動に政府が根負けした。

多い方では、新潟が1位だが、明治14年までは石川県が一位だったのだ。当時の石川県は、いまの富山県全域や福井県北部も含んでいた。ところが、独立運動が強く、石川県に属していた福井県北部と滋賀県だった南部が一緒になって明治14年に福井県が成立した。そして、2年後には富山県が独立した。

対して、越後と佐渡から成る新潟県では独立運動が盛んにならなかったということだ。兵庫と神奈川の成り立ちは特殊で、重要都市である神戸や横浜に県庁を置きたいので、無理矢理に県域を創り上げたのである。当時は、農村の税収で都市を養っていたから都市周辺だけでは財政が成り立たなかったのである。

プロローグ 47都道府県の誕生とと県庁所在地の謎を解く

第1章 関東◉ 徳川将軍の城下町から帝国の首都へ 東京23区(東京都)◉ 神奈川宿の隣の横浜村が開港場に 横浜(神奈川県)◉ 江戸時代には妙見宮の門前町 千葉市(千葉県)◉ 偕楽園は日本三名園のひとつ 水戸市(茨城県)◉ 宿場町だった浦和に県庁が置かれた裏事情 さいたま市(埼玉県) ◉ 利根川の洪水に流されて一時廃城に 前橋市(群馬県)◉ 栃木市から県庁移転後も県名はそのままに 宇都宮市(栃木県)コラム❶ 県庁所在地と県名の決まり方の法則

第2章 近畿◉ 千年を超える都は世界でも滅多にない 京都市(京都府)◉ セーヌ川が流れるパリに似た規模と都市構造 大阪市(大阪府)◉ 世界の船乗りに愛される世界三大美港のひとつ 神戸市(兵庫県)◉ 天智天皇の大津京などいくつもの宮が営まれる 大津市(滋賀県)◉ 大唐帝国の文化遺産を中国の西安などより維持 奈良市(奈良県)◉ 家康の子で一番出来がよかった頼宣が紀州藩初代 和歌山市(和歌山県)◉ 室町時代の地震で遠浅になるまで日本有数の港 津市(三重県)コラム❷ 市町村制度の歴史と明治以来の人口の推移

第3章 中部◉ 金の鯱は名古屋の一点豪華主義の象徴 名古屋市(愛知県)◉ 明治になって徳川宗家が静岡藩主に 静岡市(静岡県)◉ 織田信長の「天下布武」の本拠地 岐阜市(岐阜県)◉ 武田氏の時代から甲斐府中といわれる 甲府市(山梨県)◉ 百済伝来の観音を本尊とする善光寺の門前町 長野市(長野県)◉ 信濃川の河口に位置し北廻り船の寄港地 新潟市(新潟県)◉ 神通川の旧流を埋め立てて県庁を建設 富山市(富山県)◉ 加賀百万石の城下町 金沢市(石川県)◉ 柴田勝家の北ノ庄城から福井城へ 福井市(福井県)コラム❸ 姉妹都市の選び方に地域の個性あり

第4章 東北・北海道◉ 福島・若松・磐城の三県合併で真ん中に 福島市(福島県)◉ 伊達政宗が開いた杜の都と青葉城 仙台市(宮城県)◉ 南部信直が蒲生氏郷の指導で築いた城 盛岡市(岩手県)◉ ねぶたは日本最大級の祭り 青森市(青森県)◉ 八〇万石の最上義光の栄光にこだわる 山形市(山形県)◉ 古代には東北平定の最前線 秋田市(秋田県)◉ 北海道の最大都市になったのは昭和以降 札幌市(北海道)コラム❹ 地元の「一中」と戦前の高等教育機関

第5章 中国・四国◉ 姫路城が白鷺城で岡山城は烏城 岡山市(岡山県)◉ 聚楽第を模した桃山風の鯉の城 広島市(広島県)◉ 大内氏時代には西の京と呼ばれる 山口市(山口県)◉ 人口六〇万の県の人口二〇万人の県都 鳥取市(鳥取県)◉ 国宝天守を持つ唯一の県庁所在地 松江市(島根県)◉ 北に吉野川が流れ南に眉山が聳える 徳島市(徳島県)◉ 瀬戸内海の海水を堀に入れた海城 高松市(香川県)◉ 「春や昔 一五万石の 城下哉」正岡子規 松山市(愛媛県)◉ 龍馬のような郷士は他国より優遇されていた 高知市(高知県)コラム❺ 中国にもおくれをとる地方の交通インフラ

第6章 九州・沖縄◉ 博多と福岡のそれぞれのルーツ 福岡市(福岡県)◉ 鍋島三六万石の佐賀藩の城下町 佐賀市(佐賀県)◉ 江戸時代には世界への窓で『蝶々夫人』の舞台 長崎市(長崎県)◉ 加藤清正が築いた天下の名城 熊本市(熊本県)◉ 大友宗麟の城は現在の城より内陸側 大分市(大分県)◉ 本土の県庁所在地でただひとつの計画都市 宮崎市(宮崎県)◉ 明治維新の原動力は薩摩の下級武士たち 鹿児島市(鹿児島県)◉ 琉球王国の首都・首里の外港 那覇市(沖縄県)コラム❻ 県庁舎と市役所の建築を全国調査 47都道府県県庁舎と市役所の詳細一覧表