2025年、戦後の日本を支えてきた団塊の世代が後期高齢者となる。その75歳以上の高齢者の医療費自己負担が10%から20%に引き上げされる。収入によって線引きがされるそうだが、自民党と公明党間で収入額を巡って調整がつかない。
この施策は有権者の不評を買い、来年には確実に実施される総選挙で与党は痛い目を見るだろう。現役世代の負担を軽減することが理由らしいが、少子化という国の大きな課題が指摘されて久しい。このような状況が生ずることはわかっていたことだ。何をいまさらという思いがする。国の少子化対策が不十分だったツケだ。
経済対策も失われた20年で所得も増えず、日本は経済大国でなくなったのだから、高齢者の医療費負担が国の足かせになったのも国の不十分な対策の結果だ。そして、年金が意味のない事業で失われたという責任も問われない。しかし、企業内での留保金は増大の一方だ。
私も10年もたたないうちに後期高齢者となってしまう。その時には20%自己負担が30%、40%になっているかもしれない。うかうかと大きな病気もできない。現状を招いた政治責任はあるはずだが、政治家も役人もほとんど結果責任を問われない仕組みなので、無責任な施策が行われている。「もんじゅ」など結果的には膨大な無駄となっている。
50年後、100年後の姿を想像しつつ、10年後、5年後につながる施策が必要だが、今は、近視眼的な発想で施策が練られ、日本の地盤沈下を招いている。30年後、40年後に責任を持つことができるような若い人たちが日本の未来をしっかりと捉えていろいろな施策を練ることが必要だ。
7日も午後6時―8時と働き方改革に反するWeb会議が開かれた。厚生労働省が主催するがん全ゲノム解析の会議だが、議論を聞いていて、これでいいのか日本はという思いが強くなった。悲しいかな、がん研究・ゲノム医療なのに、がん患者の姿が見えてこない。私の心がカラカラと空回りしている音が大きく響いてきた。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年12月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。