冬になると空気が乾燥します。
加湿器をつけていないと喉の奥がイガイガしてきますよね。また、手や顔など、肌の乾燥も気になります。
しかし、なぜ冬は乾燥するのでしょうか。
これには大きくふたつの理由があります。
ひとつめの理由は気圧配置です。
冬はいわゆる「西高東低」の気圧配置になります。すなわち、大陸にシベリア高気圧が、太平洋側に低気圧が存在します。そしてシベリア高気圧から、太平洋上にある低気圧に向かって冷たくて乾燥した風が吹きます。これが冬の季節風です。
冬の季節風は、日本海を渡るときに、日本海から水蒸気の提供を受けて湿り、日本列島の中心にある山脈を超えるときに雲を発生させて日本海側に雪を降らせます。そして、雪を降らせると再び乾燥して、太平洋側に吹き降ろします。これがいわゆる空っ風と呼ばれるものです。
太平洋側では冬にめったに雪が降らないのも、空っ風が吹くのも、シベリア高気圧による季節風の仕業なのです。
では、日本海側は雪が降るから乾燥とは無縁なのかというと、必ずしもそうとは限りません。
たとえ湿った空気であっても、その空気をそのまま温めると湿度が下がってしまうからです。
これはなぜなのでしょうか。
実は、空気というのは気温が下がるにつれて空気中に含むことのできる水蒸気量が少なくなるという性質があります。
そして、湿度(相対湿度)は、空気中の水蒸気量÷ある気温の空気が含むことのできる水蒸気量(飽和水蒸気量)×100で求められます。
たとえば、湿度100%で気温が5℃の部屋の空気を暖房で20℃に温めたとします。
10℃の空気の飽和水蒸気量は約6.8g/立方メートルなので、もし湿度100%なら1立方メートルの中に含まれる水蒸気量は約6.8gとなります。一方で、20℃の空気の飽和水蒸気量は約17.3g/立方メートルです。すると、10℃のときに湿度100%だった空気を暖房で20℃に温めると、湿度は6.8g÷17.3g×100=約39.3%となり、湿度が下がってしまうのです。このように、たとえよく雪が降る地域であっても、部屋に暖房を入れると空気が乾燥してしまいます。
この、冷たい空気のキャパシティの問題が、冬の乾燥のふたつめの理由となります。だからこそ、冬は加湿器で強制的に空気中に水蒸気を補充していかなければいけません。
空気が乾燥すれば、のどの粘膜が乾いて防御機能が低下します。そして細菌やウイルスが体内に侵入しやすくなります。
今年は特に、新型コロナウイルスの感染も気になるところです。普段の手洗いや消毒、換気などの作業に加え、冬場の加湿もぜひ忘れないようにしたいものです。