今日の香港は明日の台湾、そして明後日の日本(上)

私は、国政を志して以来、我が国の外交・安全保障を担う政治家たらんとの気概で仕事に取り組んでまいりました。そのためには、第一に我が国自身の国防努力、第二に米国との同盟関係の強化、さらには価値観や利益を共有する「同志国」との連携促進に力を注いできました。第三の外交的努力の一環として、私は、国政15年の間、とくに豪州、インド、韓国、台湾との交流に努めてきました。昨今、豪州や台湾との戦略対話の重要性が高まっています。

両国との戦略対話における最大のテーマは、中国の台頭です。その裏返しとして、オバマ・トランプ政権で顕著となった米国の相対的な退潮傾向についても真剣に話し合ってきました。後者のソリューションとしては、自力(地力)をつけることと、相互連携による米国繋ぎ止めの努力(孤立主義的な潮流が強まる米国は、域内の同盟国や友好国の協力なしに安全保障のコミットメントを持続することは困難)を重ねるしかないという結論です。日豪の安全保障協力関係は、2007年に初めて2+2(外務・防衛閣僚会議)が開催されて以来、ACSAの締結、クワッド(日米豪印)協調関係の構築、そして先日来日したモリソン首相との間で合意した日豪安全保障円滑化協定により、準同盟関係に発展しました。

一方、台湾とは国交がないため表立った安全保障協力は困難ですが、それでも、我が国の南西諸島と約100キロで接する(両国の防空識別圏は与那国島で重なっている)台湾とは、戦略的に運命共同体の関係にあると同時に、インド太平洋地域における自由と民主主義の紐帯としての日台関係は極めて重要です。

その自由と民主主義をめぐって、重大な事態が香港で起こっています。発端は、中国において今年6月に「香港国家安全維持法」が制定・施行されたことです。この法律は、1997年に香港がイギリスから返還される前に英中連合声明によって国際公約された「一国二制度」の下で返還後50年間は香港に「高度な自治」を認めるとの合意を一方的に破棄するものでした。さらに、香港基本法にも反するものです。

これは、中国台頭における「ゲーム・チェンジャー」ともいうべき暴挙にほかなりません。国際社会から一斉に中国に対する非難の声が上がったことはもちろん、17か国からなる先進民主主義国の議会人たちが「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」を結成し、香港の人権と民主主義を守るために立ち上がったのです。その動きに呼応して、私たち国会議員有志は同僚議員たちに呼びかけ、「対中政策に関する国会議員連連盟(JPAC)」を設立し、7月29日に国会内で設立総会を開催しました。(次回は、JPACの目的や活動について報告します。)


編集部より:このエントリーは、TOKYO HEADLINE WEB版 2020年12月14日の長島昭久氏のコラム「長島昭久のリアリズム」から転載させていただきました。掲載を快諾いただいたTOKYO HEADLINE編集部、長島氏に感謝いたします。オリジナル記事をご覧になりたい方は『長島昭久のリアリズム』をご覧ください。