小学校35人クラスについて申し上げたいこと

岡本 裕明

小学校の一学級の定員が40年ぶりに改正され最大40人が35人となるそうです。最終目標は2025年で21年度より段階的に引き下げるとあり、一部の先生や親からは喜びの声が上がっています。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

この報道に私はやや違和感を持っています。まず、クラスに40人以上もいたのか、という印象があるのです。事実、日経は「…すでに小学校で9割、中学校で7割が35人以下となっている実態…」と報じており、日本全国、大人数のクラスを抱えているのは大規模住宅開発が進んだ湾岸地区や通勤圏のサブシティエリアなど限られたところであります。

私が不動産開発事業者として申し上げれば大規模マンションの開発計画があるところには、地域人口増に伴うインフラの整備費をデベロッパーから開発許可とバーターで徴収すべきであり、その中には一般的に知られる道路のようなインフラだけではなく、学校やコミュニティセンター、託児所などの建設費を入れるべきだと思うのです。そんなことは北米では当たり前でそれゆえに街の開発と共に地域が豊かになっていく仕組みなのに日本の都市計画ではそれをほとんどしていないんです。私は20年も前からずっと言い続けていてます。これは役所とデベロッパーの持ちつ持たれつの関係が生んだ日本の不幸です。

さて、今日、申し上げたいことはそんなことではなく、小学校の先生に教育をさせるのか、というそもそもの疑問であります。学校の先生も人の子。30人以上もいる子供たちはみなかわいい、と言いながらもお気に入りとそうではない子は必ず出てしまいます。先生の質問に生徒が手を挙げたとき、先生が誰を指すか、あるいは誰かを指名して説明をしてもらう時などはその好みが出てしまうのはやむ得ないのです。

ましてや小6や中3のクラスを持つと受験で有名私立などに合格者を出せば先生としては鼻が高いわけでどうしてもそういう頑張る子に自然と力が入ってしまうことも責められません。

しかし、偏差値時代に育つ我々が気がつかねばならないことは偏差値50を境に半分の子供はそれ以下であるということです。そしてできない子は偏差値という数字で完全にレッテルを貼られ、「自分はできない」という思い込みをしやすくなります。そうなるとどんどん下り坂を駆け落ちやすくなるのは子供にまだ自立心が十分についていないからで、そこから不良化、不登校、いじめが出やすくなります。

街中を歩くとあちらこちらに学習塾がありますが、その多くが掲げている共通の看板は何でしょうか?そう「個別指導」なのです。つまり、教育はもう、集団教育ではなく、個別指導が標準型となり、ITの進化でそれがとうの昔から可能になっています。私どもが経営する東京の塾では生徒一人ひとりにパソコンがあり、画面に沿ってそれぞれの能力に合わせて自主的学習ができるようなソフトをベースに運営しています。塾には黒板はありません。先生もいません。いるのは生徒を見守る管理者だけです。管理者は画面に沿って学習できない子に個別に教えたり、コンピューター画面だけではなく、紙と鉛筆で書かせながら教えるなど切り口を変えて個人の能力にあった指導をするようにしています。

落ちこぼれがなぜ、生まれるかと言えばほんのちょっとしたつまづきでわからなくなった瞬間、やる気がなくなるというのが7-8割のパタンです。クラス30数人が同じ理解度で進むわけがないのです。だからこそ、学校で生徒一人ひとりにパソコンを支給し、ソフトを使って個別学習させる、そして担任の先生は上記の塾でいう管理者になればよいのです。落ちこぼれを作らない、そして高い能力を持つ子はどんどん前に進ませる、結果として1年経てば当然能力の差は出ますが、凸凹は人間故の特筆であると考えるべきでしょう。そして不得手が多い子でも必ず、得手が一つや二つあるのです。そこを突破口に自信をつけさせる、これが進化した現代社会における教育のあり方だと思うのです。

実は私は更に先のことを考えています。それは少子化でどうせ、クラスは35人どころか10数人になる時代が間近に迫っていることを踏まえ、「学年混合クラス」を作るべきだと思っています。つまり、いろいろな学年の生徒が一つのクラスルームで勉強します。それぞれはパソコンでの学習ですから問題ありません。ポイントはホームルームや道徳、情操教育において様々な年齢が混じることで刺激をより多く与え、目覚めを引き出すことを考えています。そこにはリーダーシップもあるし、上級生からすれば下級生をどうやって説得させたり、理解してもらうかという工夫が求められます。

日本の教育については日教組をはじめ、様々な思想的背景が指摘されてきました。しかし、最近は日教組の組員もだいぶ減少してきています。ちょっと古いのですが、昨年3月の発表で組織率はわずか22.6%、なんと42年連続減だそうです。つまり時代は明らかに変わってきているのですが、その次の明白な方向性を打ち出せないでいます。テストの採点に時間をかけるのが先生の仕事だとは私は思いません。生徒を大人にする、しっかりした考えを持つ子を育てる、これが先生の役目なのですが、最近の社会ニュースを見ていると先生もいろいろいらっしゃるようで、これじゃあ、未来の日本を託せる子供を育てるのは心持てないと思われてしまうかもしれません。

学校教育は社会の進化と共に抜本的見直しをすべき時が来たと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年12月18日の記事より転載させていただきました。