世間には様々な事情で若いときから家族の介護を余儀なくされる「ヤングケアラー」や「若者ケアラー」が多く存在しています。日本経済新聞によると、15歳~29歳の若者は約17万7千人、家計経済の調査では、30代と40代で110万3700人いるとされます。
最近、こうした「ヤングケアラー」がマスコミで話題となり耳にする人が増えたのではないでしょうか。
『ばあちゃんは、ぼくが介護します。』(株式会社法研)を12月9日に出版しました。ジュンク堂で売上ランキング1位になり、全国紙から取材を受けるなど好評発売中です。30歳過ぎから認知症祖母を1人で8年介護する「若者ケアラー」の経緯、無理なく続けるコツ、コロナ禍の介護者対処法まで網羅した一冊です。
以下、「おばあちゃんは、ぼくが介護します。」からの抜粋です。
考えてみてください、親は若いうちから子どもに介護させたくないと思う人が多いでしょう。学校へ行けない、就職もできない、仕事を辞め多額の借金を抱え介護する子どもの姿を望んでいないわけです。
それでも、若者介護は、親の病気や経済的な事情などやむをえない理由で生まれてしまいます。しかし、「ヤングケアラー」や「若者ケアラー」を防ぐことができる家庭だってあるはずです。
わが家のような介護時の家族の姿をみて、子ども一人に介護の負担が集中する事態を予防するヒントを得ていただけばと考えています。
家族が多い、少ないは無関係
祖母は、母親が脳梗塞になる数カ月前から私の弟の写真に向かって「この子かわいそうに。食べ物も飲み物ももらえないの? あんたもってきてあげなさい」と言いました。 そのとき、私は「ばあちゃん、これはやばい」と思い、近所の脳神経外科へ連れていき、「アルツハイマー型認知症」と診断されました。「えらいこっちゃどないしよ」と思っていた矢先、母親が救急搬送。主治医から 「アテローム血栓性脳梗塞」(脳の血管が動脈硬化やコレステロールがたまり狭くなり血液の固まりができる病気)と告げられました。
突然はじまったW介護にわが家は「どうする、どうする」と大騒動・・・。
家族一同が集まり、母親や祖母の介護について話し合うものの、「私らは、仕事や育児があるしなかなか家でみるのは難しいよね」と平行線。
話し合いには、私の弟、弟の嫁、私の妹、妹の旦那がいましたが、母親と祖母の介護を一緒に手伝うと手をあげたのは一人もいませんでした。
何人家族がいようが「みんなで手をつないで仲良く介護しようね」とはなかなかいかない場合があります。
わが家の場合、祖母と母親、祖母と弟・妹の複雑な家族関係があったのです・・・。
私の家族だけではありません。
先日ある大学生のヤングケアラーから私に「大学生、鬱で来年の就活もできず大学にも通えず親と祖父母以外3年ほど会話していません、寂しくて消えそう」とSOSのメールが届きました。
要介護度が高く施設に預けられるのに在宅介護を続けた2つの理由
ヤングケアをする中、経済的な事情でやむなく在宅介護をしないといけない人が少なくないのです。
費用面は、在宅介護が毎月10万、施設に預けたら毎月20万以上と倍ぐらい違います。介護サービスは、毎月利用できる上限額が決まっています。
筆者の場合、在宅介護3年目までは祖母が要介護1か2だったので、月2回のショートステイサービス(短期入所)を除き、毎日在宅介護するしかありませんでした。
とはいえ、原則要介護が3、4、5になれば月10万円位で入所可能な特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)といった老人ホームが利用可能になります。
にもかかわらず、私が祖母を6年間在宅介護し続けたのは2つの理由があります。
一つは、私が小学生の頃に母親が離婚して、祖母が「母親、私、弟、妹の面倒をみる」と数千万かけて家を購入してくれました。
そして、祖母は私たちに「お父さんがいる家に負けたと思われたくないんだよ」と言いながら、一生懸命働きつつ私たちを何不自由なく育ててくれました。
特に私は、祖母に兄弟の中で一番可愛がられて、服やおもちゃは一番に買ってもらう、お小遣いの額は多い、兄弟で唯一大学へ進学させてもらったんです。
このように、母親のように育ててくれた祖母を一日でも長く一緒に寄り添いたいと思いました。
それと、もう一つは誰にも話せない祖母のある事情がありました。
「私の家庭は大丈夫、他人事」と思っていてるあなたこそ「ヤングケアラー予備軍」です。
この週末や年末年始、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で自宅で家族と過ごす方も多いでしょうから、介護について話し合い、拙著でヒントを得ていただければ幸いです。
『おばあちゃんは、ぼくが介護します』(株式会社法研)12月9日発売。
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Youtubeチャンネルで祖母と私のやり取りやここだけしか言えない介護の話など配信開始。